ターミーネーター2のロボットが現実に!? 液体金属へのプログラミングが可能に
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ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。
映画・ターミネーターの世界を日本人が実現させる!?
アメリカ・シリコンバレーで、イギリスのサセックス大学とスウォンジー大学の研究者たちが昨年から今年にかけて発表した『プログラミングできる液体金属の研究』が、映画『ターミネーター2』(1991年)に登場した、全身液体金属でできたターミネーター『T-1000』を現実のものとする日も近いと報じられ話題になっています。
ウィキペディアによれば、『T-1000』とは2029年にスカイネットによって開発され、従来型とは異なる、流体多結晶合金(液体金属)製のボディを持ち、その硬度は基本となる人型を構成する状態から完全な液体状態、そして刀剣や鉤爪のような高い硬度を持つ固形まで自由自在に変化するロボットのこと。
『ターミネーター2 3D』予告編
ちなみにスカイネットは、人工知能が暴走して人類を支配下においた未来のAIコンピュータのこと。人工知能が進化すると人間を超えて手に負えなくなるというストーリーはこのころから始まったようです。2018年3月に亡くなった宇宙物理学者、スティーヴン・ホーキング博士も「AIは人間を越える」と予測し、人類を超えたAIの所有者の欲望が世界を滅亡させると警鐘を鳴らしましたよね。
とはいえ現実の世界では、まだまだそのような状況には程遠いものの、今回の発表によれば『プログラミングできる液体金属の研究』では、液体金属に電流を流すことで文字やハート型になったり、さらには形を変える回路としても使えるようにするなど、液体金属をプログラムで物理的な形に変形させる方法を発明したということなんです。
その実演映像を見てびっくり! 液体金属が自由自在に形を変えて、プログラム通りの形状にどんどん変化していきます。
使われている液体金属は水酸化ガリウムで、電極の電流が流れる向きをプログラムで変えることで液体金属でさまざまな形を作ることができるようになったそうなんですが、さらにここで驚くことは、これを考え出したのが、サセックス大学のトクダ・ユタカさんという日本人研究者だということなんです。
トクダさんは語ります。
「これは、液体状態でプログラム可能な全く新しい素材であり、コントロール可能な方法で単純な液状からほかの多くの複雑な形状に動的に変換することができます。
現在この作業はまだ初期段階にありますが、液体金属の平面制御研究は、コンピュータグラフィックス、スマートエレクトロニクス、ソフトロボティクス、およびフレキシブルディスプレイなどの分野で新たな発明を生み出すことは間違いありません。」
現時点では、T-1000のように立体的な振る舞いまではできませんし、もちろん人類を支配下に置くほどの力もありません。まだ平面的なところで形状をプログラムできる程度の素材でしかないかもしれませんが、これを応用することで『柔らかいロボット』や『形状変化できるディスプレイ』など、形状がシームレスに変化するようにプログラムできる『非常に有望な』新しいタイプのマテリアル(素材)である可能性を秘めているとトクダさんは語っているわけです。
人類を超えたAIが世界を滅亡させるようなことには絶対あってほしくはありませんが、日本人の知恵が世界を舞台に新たな分野を牽引していくことは大いに応援すべきことであり、そこにはターミネーターのような恐ろしい世界ではなく、ドラえもんのような楽しい世界が待っていることを願いたいものです。
[文・構成 土屋夏彦]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。