AIロボットが千切りキャベツ50gを正確につかめるようになった仕組み
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ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。
千切りキャベツを正確につかめる人工知能ロボットアームが誕生!?
さまざまな場所でロボットとITのよるいわゆる『ロボデックス』が進むなか、食品加工などにおいては、食品のやわらかさをコントロールしながらのオートメーション化など難しい一面があったそうです。
しかしついに、ロボット設計開発ベンチャーのロボコム株式会社が、東京大学松尾研究室の協力を得て、決められた量の千切りキャベツを取りわける、AIとロボット活用による『自動定量ピッキングシステム』の開発に成功し、世界初のロボットによる千切りキャベツの『定量ピッキング動画』を公開しました。
食品工場の人材不足という深刻な課題
発表資料によれば、現在日本国内の工場では深刻な人材不足に陥っており、特に食品工場においては他の製造業と比較して2倍の欠員率ということで、その人材不足をどうやって解決するかが重要な課題になっているそうです。
食品工場の現場では、作業員が毎日同じ動作を繰り返す単純作業が多い一方で、そのぶん採用が難しい状況が続いているようです。
特に千切りキャベツなど食品工場における細かい素材の作業は機械化も難しい内容が多く、いち早いAIロボットによる代替が望まれていたということです。
強化学習で「50グラム」を覚えたロボットアーム
東京大学松尾研究室といえば、日本のAI研究の中心的な研究室ですが、ここの機械学習の一手法である強化学習技術を活用して、毎回キャベツの千切りを50グラムだけつかむことができるように、何度も機械学習させロボットアームを制御させていき、2時間かけて200回の学習をさせたところ、最初はほとんどキャベツをつかむことができなかったのが、最後には目標の50グラムとの誤差平均が4.88グラムと10%以下になったということです。
学習を重ねるごとにアームの動きが洗練されていく様子は、動画でもよく分かります。最初と最後では、つかみ方の安定感がまるで違うとのことです。
ロボットのハンド部分は3Dプリンターで作成しコストを大幅に削減させ、システム作成にはロボット競技の世界大会『World Robot Challenge』のものづくり競技カテゴリーで、参加チーム中唯一課題を完遂した株式会社オフィスエフエイ・コムに依頼するなど、さまざまな工夫をこらせて作り上げたそうです。
3Dプリンターの活用によってハードウェアのコストを抑えつつ、ソフトウェア側の学習精度を高めるという方向性が、今回の開発のポイントといえそうです。
タコを参考にした「やわらか手」の先行研究
ちなみに、やわらかいものを優しくつかむことにかけてロボットは、もともと得意ではなく、これまでにもさまざまな研究がされています。
ハーバード大学の研究員らを中心に創業された米国発のベンチャー企業『ソフト・ロボティクス』では、タコを参考に柔らかい物体を優しくつまみ上げられる『ロボットの手(グリッパー=gripper)』を開発しました。発表資料によれば、ポンプで空気を注入するとグリッパーが素早く膨らみ、目標物をつかみ、ポンプで空気を排出すると、指は元の形状に戻り、それまでつかんでいたものを離すことができるという仕組みだそうです。
タコの柔軟性をまねることで、卵でも、生肉でも、ペンでもさまざまな形状の、それも硬いものからやわらかいものまでをつかみわけることができ、これにより1分間に133個のプチトマトを、つぶさずつまみ上げて箱に詰められるようになったそうです。
「つぶさず、かつ落とさず」という相反する要求を同時に満たせる点が、このグリッパーの大きな強みといえるでしょう。
またこれまでは扱うものによって操作方法を学習させる必要があり、そのために膨大なデータや時間がかかっていましたが、このグリッパーなら扱うもののよってつかみかたを教える必要もなくなったそうです。ただしグリッパーでは定量的なものの仕分けまではできませんでした。これを実現させた今回の『自動定量ピッキングシステム』はさらに一歩進んだ技術になります。
「やわらかくつかめる」と「決まった量をつかめる」という2つの課題を同時にクリアしたところに、今回の開発の意義があるといえそうです。
食品分野のAI活用はさらに広がる可能性
松尾教授によれば「食品分野は(AIやロボデックスにおいて)大きな可能性のある分野の1つ。今後も人手不足という大きな社会課題の解決に向け、AI技術の産業活用を進めていきたい」ということです。
千切りキャベツの次に、どんな食材や工程がロボット化されていくのか、今後の展開が注目されます。
[文・構成/土屋夏彦]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。