ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑教授 がん治療に光をもたらした研究とは
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ダルビッシュ有が日本に帰国 向かった先は…?2024年11月12日、メジャーリーグの『サンディエゴ・パドレス』に所属するダルビッシュ有選手が、自身のブログを更新。日本に一時帰国していたことを明かしました。
俳優・火野正平さんが逝去 腰痛の治療に励むも腰部骨折に火野正平さんが亡くなったことが分かりました。ご冥福をお祈りいたします。
grape [グレイプ] society
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ダルビッシュ有が日本に帰国 向かった先は…?2024年11月12日、メジャーリーグの『サンディエゴ・パドレス』に所属するダルビッシュ有選手が、自身のブログを更新。日本に一時帰国していたことを明かしました。
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ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。
がん治療法に結び付いた研究で、日本人がノーベル賞を受賞!
2018年10月はノーベル賞の発表が相次ぎました。1日(月)は生理学・医学賞、2日(火)物理学賞、3日(水)化学賞、そして5日(金)には平和賞が発表されました。中でも日本人で京都大高等研究院の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授が米テキサス大教授のジェームズ・アリソンさんとともに『医学生理学賞』を受賞したことは大変盛り上がりましたね。
日本からの受賞者はこれで26人目。医学生理学賞では、1987年に受賞した利根川進さんや、2012年に受賞した山中伸弥さんなどに続いて5人目の受賞だそうです。
本庶教授は1942年京都市生まれの76歳。京都大学入学当時から生化学の分野で腕を鳴らし、米国留学などを経て1979年、37歳の若さで大阪大学教授に就任。その後84年に現在の京都大学に移り、ここで『免疫分野の研究』で大きな成果をあげました。そこで発見したのが今回のノーベル賞受賞にもつながる『PD-1』というタンパク質。
人間の体は、基本的に体の中に細菌などの異物が入るとそれらを排除するための『免疫機能』というものが自然に備わっています。その免疫細胞のひとつである『T細胞』が作り出すのが『PD-1』になります。これが体に入った細菌やがん細胞を攻撃し始めるのですが、がん細胞の場合はほかの細菌などと違って、負けじとがん細胞側から『PD-L1』という別のタンパク質を作り出して防御するんだそうです。そうするとなんと『PD-1』と『PD-L1』が結合してしまい、その結果がん細胞への攻撃が止まってしまい、免疫機能にブレーキをかけていたそうなんです。
本庶教授は、だったら『PD-1』と『PD-L1』が結合できないようにしたらがんにも免疫が攻撃してくれるようになるのではと考え、結合できなくなるようにするための物質『オプジーボ(opdivo:製品名 = 一般名:ニボルマブ:Nivolumab)』を試してみたところそれが見事に的中し、免疫ががん細胞を攻撃できるようになったそうなんです。要するにこれまでの抗がん剤はがんを直接攻撃するものでしたが、こうしたしくみの発見で、人間の治癒能力を強化してがんを治す『がんの免疫治療』が確立されたというわけです。
実は『PD-1』を最初に発見したのは、現在奈良先端科学技術大学院大学・機能ゲノム医学研究室の石田靖雅准教授なんだそうです。ウィキペディアなどによれば、彼は1992年、当時京都大学本庶佑の研究室メンバーとして、免疫細胞のひとつである『T細胞』の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子を発見。この時はまだ遺伝子が何の役割を果たしているのかはっきりしていなかったのですが、これを細胞死する際に重要な役割を果たしているはずだという願いをこめて『PD-1(Programmed cell death 1)』と命名したとあります。
石田准教授は、その後1年でPD-1研究から離れましたが、その後も本庶教授の研究室ではほかの研究員たちにより長年にわたって研究が引き継がれました。その結果当初の仮説とは少々違ったものの、T細胞が生体内に広がった後に免疫反応を負に制御する遺伝子細胞であることが証明されるに至ったということです。
その後PD-1に結合し作用させるPD-L1/2遺伝子を多く発現したことで、これが自己免疫を弱らせてしまうことが明らかになり、PD-L1/1の抗体薬として『オプジーボ』が認可されることとなったようです。
国立がんセンターが発表している『最新がん統計(2016年)』によれば、がんで死亡する確率は、男性25%(4人に1人)、女性16%(6人に1人)とあります。がんは我々にとってそれほど身近な病気であり、『オプジーボ』はがん治療に広く使われ始めていますが、まだまだすべてのがんに効くという万能薬ではありません。ノーベル賞でさらにオプジーボ効果がさらに注目され、さらなる万能薬の発見が進むことを願っています。
[文・構成 土屋夏彦]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。