grape [グレイプ] lifestyle

使っているモーターは2つだけ 大学生が考えた靴紐を結んでくれるロボットが実はすごいかも!?

By - 土屋 夏彦  公開:  更新:

Share Post LINE はてな コメント

ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。

シューズがスムーズ!靴紐を結んでくれるロボットが誕生!?

靴の紐を自動で結んでくれるロボット『シュー・タイイング・ロボット(the shoe tying robot) 』を、カリフォルニア大学デービス校の生徒が600ドル(約6万5千円)で作っちゃったということで話題になっています。

動画には、ロボット製作チームのアンドリューチョイ(Andrew Choi)さんを始めメンバー5人全員の名前が掲載され、彼らからのメッセージとして「このマシンはモータを2つしか使わないというのに加えて予算が600ドルという限界に挑戦した結果です。」と書かれています。

それに対し「素晴らしい仕事ですが、結果はおばあちゃんの結び目のように見えます。」といったユーモラスなものから「私はサンフランシスコのABC Newsのプロデューサーです。あなたのビデオをオンラインで使用させてください」というマジな使用許諾までさまざまな一般からのメッセージも書き込まれ、注目の大きさが伺えます。

改めてロボットの動きを動画で見てみると、靴紐を右と左のフックにひっかけると、後は自動で器用にくるっと回して靴紐を結んでくれるというなんともユーモラスな動きをしています。さらにこのロボットの動きを続けて見ていると「靴紐の輪を作って間に通して引っ張って・・・」といったかなり複雑な動きになっていきます。これがたった2つのモーターだけで動かしているというのは本当にすごいです。

そんな感覚を裏付ける記録を見つけました。電通大でロボット研究をされている大学院情報システム学研究科の工藤俊亮准教授が研究室のホームページに残されています。彼らの研究はロボットが人間の行動を見て、そこから『コツ』を見出し複雑な動作でも真似をさせようとする『人間行動観察学習』だそうなのですが、ロボットに紐を結ばせることがとてもよい学習材料になるそうなのです。

なぜなら人間をまねて、まったく同じ手先動作でロボットが紐を操作したとしても、必ずしも同じように紐を結べるとは限らないからなんだそうです。しかしこれを人間がいちいちプログラムしていたのでは大変なので、1回人間が教えれば、何がその作業の『キモ』なのかをロボットが自動的に『スキル』として学んでくれるようにできないかと研究を続けていると研究室のホームページにかかれています。つまりいまのところ『自動で紐を結ぶロボット』は実現できていないのです。そのくらい『紐を結ぶ』ことはロボットにとって意外と難しいことのようです。

また『紐結び』で検索してみると、滋賀県に本社を置く株式会社ナカサクというガラスや鉄などの加工会社は「ロボットで固結びの自動化に成功しました!」と同社のホームページで紹介しています。製造日は2015年08月、そこには「人手でやっている作業を自動化しませんか。」とあります。今回の『シュー・タイイング・ロボット』よりもだいぶ昔に作ってあったようですが、当然、600ドルではとても作れないようなしっかりしたものになっています。

こうしたことから考えると、カリフォルニア大学デービス校の5人の生徒たちは、かなりすごいことをやってのけたのではないかと思うのです。

でもこの動画では、結び終わるまでかなりゆっくりなので、「もっと予算が集まれば早くなるのかな」などといった声もあがっているそうです。とはいえ、なんでもかんでもスピードアップを目指すITの進化が目まぐるしいからこそ、ゆっくりと靴紐を結ぶロボットを天才的な若者たちが作り上げたことに意味があるような気がしてきます。


[文・構成 土屋夏彦]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。

出典
Shoe Tying Robot電機通信大学株式会社ナカサク

Share Post LINE はてな コメント

page
top