不良品を人工知能で仕分け生産性アップ 識別が難しい『食品原料』で実現!
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マヨネーズで有名な大手食品メーカー・キユーピーが、先日行われた『Google Cloud Next ’17 in Tokyo』で、キユーピーが生産するベビーフードなどの品質と安心を支えるために、AIの技術である「ディープラーニング(深層学習)」を活用して、生産性が2倍に高まったと発表しました。
キユーピーのコーポレートメッセージは「愛は食卓にある。」。「良い商品は良い原料からしか生まれない」即ち『安全』なだけでなく『安心』できる原料が大切、と今もその考え方が徹底されています。
そのため原料検査の基準は厳しく設定。例えば、ベビーフードに採用される、さいの目状にカットされた『ダイスポテト』の品質管理では、単なる変色など、食べても問題ないようなものでも、子を持つ母親からすれば心配のたねになることから取り除くよう心がけてきたそうです。
しかし、それをスタッフが目視で1つひとつ取り除くためには、より高い技術や経験、集中力が必要になっていました。
今回のプロジェクトに参加した、鳥栖キユーピーの向井泰平さんによれば、鳥栖工場ではスタッフの約4分の1にあたる30~40名が1日あたり4~5トンもの原料に対し全量検査を行っており、それが大きな負担となっていたんだそうです。
検査には一定以上の熟練が求められるため、増員も容易にはできず、思うような増産ができないといった大きなボトルネックができていたわけです。
これまでも「機械化できないか」ということは何度も検討をしてきましたが、様々な観点から現実的な対策は見つからなかったんだそうです。
そこで、今回の講演会の発表者でもあり、キユーピーの生産本部で次世代技術担当次長を務める荻野武さんは、自ら学習して精度を高めていくことができるAIを活用することで、この問題を解決できるのではないかと考え、昨年ころからAIを活用しての不良品の見分け方を学習させてみたんだそうです。
荻野さんによれば、具体的な検討を始めたのは2016年夏ごろから。
『最初に最も高いハードルを課す』ため、安全・安心において最も厳しい目が向けられる『ベビーフード』の原料となる『ダイスポテト』を検査対象に設定。約1万8000枚の写真をAIに読み込ませ、良品・不良品のしきい値を徹底的に学習させたそうです。
※写真はイメージ
学習当初は、不良品のパターンが多すぎで、どれも不良品と判断するようになり上手くいかなかったそうなんです。そこで、良品だけを判断するよう変更してみたところ、少量の不良品だけを選別できるようになったそうなんです。
今回のAIの開発を担当された株式会社ブレインパッド、テクノロジー&ソフトウェア開発本部の下田倫大さんによれば「AIを正解・不正解を判断するための『分類器』として使うのではなく、良品の特徴を学習したうえで、そうでないもの=不良品を弾く『異常検知』というアプローチを採用したことが功を奏した」ということです。
今後は原料の検知にとどまらず、AIの活用について、生産や製品の配送に関わる需給予測や設備予兆診断など、幅広い分野への活用を目指していきたいということです。
荻野さんはさらに「この取り組みに際して誤解されたくないのは、AIによる自動化の目的が、人員・コストの削減ではなく、むしろ狙いは人の活用性の強化だということを理解して欲しい。
今回もAIによる検査システムで大まかに不良品を取り除いたあとは、そこから漏れたものを、熟練のスタッフが弾いていくという合わせ技で初めて生産性を高めていけることを確信しました。実際、実証実験に協力してくれた現場スタッフの反応も極めてポジティブでした。」とのこと。
つまりAIの可能性を引きだすのは、結局使う側の人間、現場の人間だということ。今回のAIの取り組みによって、今後の正しいAI活用の一端が見えて来たのではないでしょうか。
[文・構成 土屋夏彦/grape編集部]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。