grape [グレイプ] lifestyle

世界的なミツバチ不足 ついに農作業の受粉をしてくれるロボットが登場

By - 土屋 夏彦  公開:  更新:

Share Post LINE はてな コメント

ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。

ミツバチ不足を解消!受粉作業ロボットがスゴイ!

ここ数年、世界各地からミツバチの個体数が一気に激減し問題となっているそうで、アメリカのウエストバージニア大学の研究チームが、ミツバチのように農作物の受粉をしてくれるロボット「ブランブル・ビー(BrambleBee)」を開発したと発表がありました。

ウエストバージニア大学の研究チームのページによれば、受粉サービスは、経済的に貴重なのはもとより、多くの作物生産システムにとって不可欠なものです。

ミツバチがいなくなると、世界の作物の1/3が消えてしまうといわれるほど、ミツバチは多くの作物の生産を支えています。

それほど貴重な受粉作業にもかかわらず、どんどんミツバチが世界から消えていっています。その原因は諸説あるとされますが、有力なのはネオニコチノイド系農薬によるものといわれています。約10年前の2007年には北半球の4分の1のミツバチが消えてしまったという報告もあり、その範囲はフランス・ベルギー・イタリア・ドイツ・スイス・スペイン・ギリシャ・オランダ・スロベニア・イギリス・中国・アメリカ・カナダ・ブラジル・インド・台湾・ウルグアイ・オーストラリア、そして日本にまで広がっています。

これは経済的および食糧安全保障の観点から、現在の農作物生産者が代替の受粉システムを求める緊急の必要性がある、まさに危機的な状況というところまで追い込まれています。

こうした状況を受けて、ウエストバージニア大学の研究チームによれば、受粉、害虫および植物病害の精査、花の間伐、果物の在庫、および野菜と野菜の多様な作物に対する総合的な健康像の評価など、精密なサービスを提供する自律型ロボットを持つことが急務と考え、受粉ロボット「ブランブル・ビー」が考案されました。

さすがにミツバチのような小さいロボットが飛び回って受粉するわけではなく、あくまで畑の周囲を動き回るような工業ロボットなんですが、長いロボットアームの先端のカメラで花の位置を確認し、ブラシのようなパーツで受粉作業をするということで、逆にすべての花をまんべんなく受粉して回るといった、ミツバチでは活動時間が長くてできないような行動にも対応できるように設計されています。

この花粉ロボットによって、温室環境における芽吹き(ブラックベリーおよびラズベリーなど)の受粉の有効性の実証実証を行うとともに、ミツバチと花の間の受粉の詳細なメカニズムも調査していくということで、農作物をコンスタントに発育させるための今後の活用が期待されます。

その一方で、人工的に作った花にミツバチを呼び寄せて、ミツバチの生態系を調査、回復させようとする動きもあります。それがオーストラリアのアーティストマイケル・キャンディ(Michael Candy)さんが作った「人工授粉装置(SYNTHETIC POLLENIZER)」。これは、ミツバチの人工的な受粉をサポートする花型ロボットになります。

この本物そっくりな花形ロボットは、花びらやオシベを3Dプリンターで作成。ミツバチが好む色と形にするまで何年もの研究を要したそうです。

この人工の花の表面には人工蜜や花粉が出るようなしくみを搭載。ミツバチは本物の花だと思って、蜜と花粉に引きつけられ、花形ロボットで受粉を始めます。このミツバチの生態を観察するためにカメラも搭載されています。こうした研究から、ミツバチの生態系を回復させ、さらには人工的な受粉方法の開発にもつなげようということだそうです。

いよいよ、ロボットが生命のライフサイクルをサポートする時代に突入です。


[文・構成 土屋夏彦]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。

出典
BrambleBee Greenhouse Pollination Experiment with QR FlowersMICHAEL CANDYSYNTHETIC POLLENIZERPrecision Pollination Robot

Share Post LINE はてな コメント

page
top