学生がAIを設計し、民間企業がロケットの発射場を建設!? 民間の力に驚いた
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ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。
民間の力に驚き!学生が人工知能を開発し、市民がロケットを打ち上げる
毎日8時間もかかって母親がやっていたきゅうりの仕分けをなんとかしようと、息子がAIを使ったきゅうりの仕分けシステムを作ってしまったというニュースは、もうかれこれ3年前のこと。
こういった背に腹は代えられない現場の底力こそがいまでも世界を救っています。
きゅうりの仕分け機の様子
今回は水産業界が抱える高齢化や人手不足といった課題を解決させようと、長崎の佐世保工業高等専門学校の学生が『魚を種類ごとに仕分ける人工知能システム』を作ってしまいました。
そもそものきっかけは、長崎県の県北振興局が佐世保高専に相談したのが始まりだそうです。これを聞きつけ、電子制御工学科5年の志久寛太(しく・かんた)さん(20歳)が卒業研究としてやってみようと、昨年9月から取り組みました。
そして志久さんは、佐世保魚市場の協力で、アジ、サバ、イワシなどの魚の画像約2000枚をAIに学習させて、なんとベルトコンベヤーに流れてくる魚を100%の確率で仕分けできるシステムを作り上げてしまいました。
佐世保魚市場の井上社長によれば「(このシステムは)見分けられる魚種が増えていけば、全国で需要がある」と太鼓判を押したそうです。ちなみに開発した志久さんはこの4月から東京大学工学部への編入も決まっているそうです。
そんな民間の力が、和歌山県の串本町でも大きな力を発揮してくれています。2年前くらいから県民からの意見で『1㎞圏内が無人であって、南や東に『打てる』場所といえば、全国を探しても串本町しかない!』という声があがっていたそうです。
この『打てる』とはどういうことか。実はロケットの打ち上げのことなんです。
安全上の理由などから、ロケットの打ち上げには、南東方向に陸地や島がないことや、発射予定地点から1㎞以内が無人、そして赤道に近く、ロケットに積まれた衛星を軌道に乗せるのに有利な場所というシビアな条件があります。その条件に和歌山県串本町がもっとも適していると声があがっていたそうなんです。
そこで県が小型ロケットの打ち上げサービスを展開する『スペースワン社』に相談を持ちかけたところなんと、ロケット発射場を串本町田原地区に建設しようとトントン拍子に決定してしまったということです。
ホームページによればスペースワン社は、小型ロケットによる商業宇宙輸送サービスの提供を目的に、2018年7月にキヤノン電子株式会社、株式会社 IHI エアロスペース、清水建設株式会社など4社の共同出資により発足。
契約から打ち上げまでの『世界最短』と、打ち上げの『世界最高頻度』を目指すというモットーを掲げ、専用の小型ロケットと自前の射場で宇宙へのアクセスコストを下げ、宇宙ビジネスのさらなる拡大に貢献しようとしている国内唯一の民間宇宙開発会社です。
ロケットの運用は2021年ころからということですが、実現すれば、民間企業が建設する日本初のロケット打ち上げ射場となります。ここで年間20機ほどのロケットを打ち上げることになるということで、和歌山県はロケット発射場で新たな観光資源を得ることで、10年間で約670億円の経済効果を生み出すと試算しているそうです。もちろん串本市民も、新たな観光事業ができると大いに期待しているそうです。
こんなところにも地域創生の『たね』があることも驚くとともに、それを実現させてしまう民間の力はタダモノではありません。
[文・構成/土屋夏彦]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。