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「このブロックなら抜けるかな?」AIを使ってジェンガをするロボットを開発

By - 土屋 夏彦  公開:  更新:

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ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。

このブロック抜けます!ジェンガができるロボット!?

MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームは、AIを使って積み木ゲーム『ジェンガ(Jenga)』のプレイが可能なロボットを開発したと発表しました。

発表レポートによれば、ジェンガとは、スワヒリ語で「組み立てる(build)」の意味。54個の長方形のブロックが、それぞれ3つの積み木(以下ブロック)からなる18層に積み重ねられ、各層のブロックは、下のブロックに対して垂直に配向されているとあります。

ゲームの目的は、ブロックで作ったジェンガタワーを崩さず、タワーを構成する各ブロックを抜いたり積んだりすること。タワーを倒した人が負けになります。

MITの機械工学科のアルバート・ロドリゲス教授はこう語っています。

「このロボットは以前のシステムでは達成が困難なことを実証しています。ジェンガのようなゲームをプレイするようにロボットをプログラムするには、従来の機械学習でさせようとすると、ブロック、ロボット、そしてタワーの間で起こり得るすべてのものを取り込む必要があります。それは何万ものブロック抽出試行ではないにしても、何千ものデータを必要とする大量の計算作業です。

ましてや、チェスや囲碁などのより純粋な認知作業やゲームとは異なり、プロービング、プッシュ、プル、配置、ピースの整列などの身体的スキルの習得も必要。それには対話型の知覚と操作が必要です。ブロックを移動する方法とタイミングを学ぶためには、ジェンガタワーを触るまで分からないのです。」

Courtesy of the researchers

そこで、ロドリゲス教授と彼の研究メンバーは、ロボットがジェンガで遊ぶことで自然に学べてしまう効率の良い方法を考えようということになりました。彼ら研究チームは、ロボットにブロックの抜き差しがしやすいアームを装着。アームは柔らかい先端のグリッパーと、力を感知するリストカフで触覚をデータ化。さらに視覚を補うための外部カメラでその様子をモニターします。

ジェンガタワーはロボットの手の届く範囲内に設置。こうした環境を整えた上で、ランダムにブロックを抜いて、一番上に乗せるという、いわゆるジェンガの動作トレーニングを開始しました。

タワーからブロックを抜く際は、最初に抜いてもタワーが転倒しないか少しだけ押し出してみるという微妙な動作も学習させたそうです。また各ブロック試行については、関連する視覚的および力の測定値をAIに記録し、各試行が成功したかどうかをラベル付けしていきました。このようなトレーニングを続けたところ、なんと、何万回もの試みを実行することなく、たった約300回で最適なブロックを探し当てることができるようになったそうです。

こうしたトレーニングを済ませたロボットは、タワーが倒れる前にどれだけのブロックを取り出すことができたかについては、人間とほぼ同じレベルに。しかし、これを人間と戦わせて人間に勝つようにするためには、物理的な相互作用に加えて、さらに対戦相手がタワーを転倒させずに次のブロックを引き出すことを困難にするようなブロックを抽出するなどの戦略も必要になってくるそうです。

現時点で研究者たちは、今はジェンガチャンピオンを開発することにはそれほど興味を持っておらず、こうしたロボットの触覚と視覚を駆使した新しいスキルをデータ化して他の作業に応用することに焦点を当てていきたいと語っています。

ちなみにこうした学習データは、今後、埋め立てゴミからリサイクル可能なものを分離する作業や、スマートフォンやPCなどの精密機器の組み立て作業など、『慎重かつ物理的相互作用を必要とするタスク』に応用できるそうです。

これからのロボットには、こうした微妙な動きも必要になっていくのですね。


[文・構成/土屋夏彦]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。

出典
MIT NewsMIT Robot Learns How to Play Jenga

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