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1日800本売れたTwitterで話題の「マスク自販機」!発案者が語る誕生秘話

By - grape編集部  公開:  更新:

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コロナ禍で迎えた2020年の夏。

酷暑でのマスクに「辛いなぁ」と感じた人もいるのではないでしょうか。そんな中、Twitterで話題になったのが『マスクの自動販売機』です。

岡山県・倉敷市児島地区の『児島ジーンズストリート』には、5月から『冷たいマスク』を購入できる自動販売機が設置されています。

『夏マスク入荷しました』という幟と共に、白色や斑点模様が美しい色付きマスクが入った自動販売機。これは同市で自動車シート縫製を行う『有限会社渋谷(しぶたに)商店』が開発したものです。

この夏、人々を魅了した『マスクの自動販売機』。その誕生秘話を同社社長の渋谷敏夫さんにお聞きしました。

自動車シート縫製会社が布マスクを作ってみた!

1969(昭和44)年に創立した渋谷商店は、自動車シートの縫製会社。

三菱自動車工業やマツダの自動車シート、ヘッドレストなどを手がけています。

――新型コロナウイルスの影響は?

渋谷社長:
2020年3月までは正常に動いていましたが、4月に入ると一気に8割ダウン。

リーマンショックをなんとか乗りきって、「これから!」という時にまたこんな状況になりました…。

――コロナ不況対策として、マスク販売を?

当初は販売を想定していませんでした。

ところが、3月に入ってマスクが全く手に入らない状況で「ないなら、うちにミシンがあるから自社で縫おう」ということになりました。

最初は従業員とその家族分だけを作っていましたね。

――もともとは販売目的ではなかった…。

はい。

自分たち用に作っていたら、周りにマスクがなくて困っている人が多かったので「どうせ暇だし、たくさん縫って必要なところに寄付しよう」と。

そこで1000枚作って3月半ばに岡山県庁へ寄付しました。

――1000枚も!

大量に作れるのがうちの特徴なので(笑)。

すると新聞で取り上げていただき、介護関係の企業や個人の方から「うちにも作ってくれないか」と問い合わせが入るようになったのです。

「時間もあるし、やれることはやろう!」と、必要な方に届けました。

自動販売機で夏マスクを販売!

――自動販売機はいつから?

渋谷社長:
4月に入って従業員から「マスクが暑い!蒸れてしょうがない!」という意見が出まして。「じゃあ夏用に改良しよう」と、次のマスク作りがスタートしました。

ただ、うちは小売の経験が全くないので「どうやって売っていくか」をずっと考えていたんです。

ちょうど社員寮がジーンズストリートに面しているので「店を出すのは大変だから、自販機を置いてみようか」と。

種類もたくさん入りますし。自販機は中古で購入しました。

――自動販売機で売るための工夫は?

それまでは白マスクだけでしたが、従業員に手染めを趣味にしている人がいたので、色を付けたマスクも作って種類を増やしました。

――従業員のアイディア?

はい。

従業員から「趣味で手染めをしているので、家で染めてきましょうか?」といわれて。

完成品がよかったので色付きマスクも作ることにしました。

――それで白色と色付きで自販機に並べたと?

最初は水道管のパイプを利用した円筒形の容器に、マスクを入れて売っていました。

今は瓶詰めにして並べています。

温度は5℃で保たれているので、着用した瞬間は冷たいです。

ジーンズストリートに長蛇の列!

――マスク自販機の反響は?

渋谷社長:
最初は1日に20枚くらいの売り上げでした。

それがTwitterやケーブルテレビで取り上げられて、一気に全国から取材が来るようになりました。

1日の売上は多い時で、自販機だけでも800本。1時間半に1回補充しなければ間に合いませんでした。

――どういう方が購入を?

お一人の方が家族分をたくさん買っていかれたり、お土産として買われる方も多いです。

――オンライン販売の反響は?

やはり最初はすごかったです。

オンラインサイトは自分たちで作ったので、「1日数件注文があればいいか」と思っていました。

でも1時間に700件のオーダーで…受付できなくなり、何日かサイトを閉じました。

今は対応できるようになっています。

――それはすごいですね。

おかげさまで助かりました。

本業の仕事は少なくなりましたが、マスク対応で忙しいです。

従業員の解雇などもなく、そのまま業務を続けることができました。

従業員を心配させなくてよかったので、助かっています。

自動車シート縫製技術だからこその立体感

――自動車シートの縫製技術はどう生かされている?

渋谷社長:
うちは厚物が得意なので糸も太いし、アパレルさんのような繊細な縫いはできません。

ただ、芯材を入れて立体的に作るのは得意です。

芯材が入ることでマスクに空間が出るので、お客様からは「つけていて非常に楽だ」といわれます。

――SNSでも「口に布が当たらない」というコメントがあったが?

はい。

リピーターの大学教授からも「講義で長時間話すので、このマスクが楽。ほかは考えられない」といっていただいています。

美容師や音楽講師からも「口紅がつかない」「苦しくない」と好評です。

――ほかにもこだわりが?

肌に接する面はシルク素材を使い、おもて面はWガーゼにしています。

接触冷感の綿材は使わずに、優しい素材で肌触りがよいものを選びました。

蒸れも少なく乾いた質感です。夏は涼しく冬は暖かいので、通年使えます。

肌に触れる面は『Wステッチ』といって、縦線を二重に塗っています。

――縫製会社だからこそ!

もともと従業員が自分達のために作っていたので、「ここが悪い」などいろいろな意見が出ました。

その意見を取り入れて繰り返し改善したのが今の形です。

冬に向けて温かいマスクも!

――今後の展開は?

渋谷社長:
今考えているところです。

温かいマスクも考えてはいますが、ジュースの自販機は、全てが温かくはならないんですよ(笑)。

冷たい部分には冷たいものしか入れられないので、どうするか考えています。

ほかにも贈答用に『願衣(ねがい)』というマスクを考えています。

――可愛い!

ありがとうございます。

うちのマスクは芯材を入れているので、芯材を折らずにキレイに畳むたたみ方がありまして。

そのたたみ方で顔のイラストを入れたら、「お雛様みたいにかわいくなるなぁ」と。

――色合いもキレイでプレゼント向き!

今販売しているマスクよりも、さらに付け心地がよく楽な仕様にしています。

健やかな日々を願う『願衣(ねがい)』をこめて、贈答用やちょっとしたプレゼントにいいのではと思っています。

9月下旬に小売店で販売できるように、今動いています。

寄付から始まったマスクが一躍人気になり、自動販売機まで展開した渋谷商店。

今後の新製品も楽しみですね!


[文/コティマム・構成/grape編集部]

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出典
有限会社 渋谷商店

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