【震災遺構を歩く】『奇跡の一本松』が物語る震災からの5年
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「たかが30cm」「津波しょぼい」に憤りの声 「絶対に侮っちゃいけない」日本各地で津波警報が発表された2025年7月30日。実際に到達した津波に対し「30cmの津波なんてしょぼい」などという声が上がって…?

津波のスピードは『ジェット機並みの速さ』になることも 警報が発表された時の行動は?2025年7月30日8時25分頃、ロシアのカムチャツカ半島付近で、マグニチュード8.7の地震が発生。その影響で、同日11時現在、北海道から本州、九州まで、太平洋側を中心に広い範囲で『津波注意報』および『津波警報』が発表されています。津波警報が発表されたら、すぐに避難を始めることが大切です。
想像していたより高く、細かった。また海水につかり枯死し、保存処理が施されていたため風が吹いてもなびくことがなく、色も少し黒っぽい。か弱そうな松の木がどうやって一本だけ倒れずにいることができたのだろうと、不思議に思った。
木の隣にはやなせたかしさんがデザインしたモザイクタイル画が飾られていて、「優しく微笑む太陽が光を一本松に照らす」という、一本松に込められた希望が描かれていた。
津波に耐えることができた唯一の松として奇跡の一本松は震災後、多くの人々を勇気づけた。現在一本松の周辺は「復興祈念公園」として整備が進んでいる。
一本松の後ろには黄色い建物があった。建物の半分が完全に崩壊していて、通風機のようなものがすべて外壁から破り取られたかのように外れ、ケーブルからぶら下がっていた。後々調べてみるとここは以前、陸前高田ユースホステルとして高田松原公園内で営業を行っていたことがわかった。津波の被害に遭う前の施設は高田高原内にあり、松林に囲まれていた。
大きな被害を受けたユースホステルであったが、幸い2011年1月から長期運休中であったため人的被害はなかった。そしてこのユースホステルが盾となって波の力を弱め、奇跡の一本松が残ることができたとも言われている。
人間のような「命」はないかもしれないけれど、震災に遭遇したものすべてが己の存在を保つために波に耐え、それをきっかけに奇跡的に周りのものをも助けることができたという現実もあったのではないか。