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『ムーアの法則』崩壊 そんな中、自分だけで学習を行う『エッジAI』を日本企業が開発!

By - 土屋 夏彦  公開:  更新:

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ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。

自分自身で学習するAIがチップになっちゃった!!

通常、AIを学習させるためには、大量のデータを学習させるためにネット上のクラウドサービスをいくつも連携させ、学習させる過程でエンジニアによるチューニングの手間が必要になるなど、時間や人件費、そしてインターネット利用のための通信費などが膨大にかかります。

こうした手間やコストをかけなくても、自分自身だけで学習したりチューニングしたりできるカードサイズのAIチップ『AiiR(エアー)』(AI in Real-timeの略)を、なんと日本のスタートアップ企業『株式会社エイシング』が開発し発表しました。これはクラウドを介することなくリアルタイムに自律学習することが可能なエイシング独自のAIアルゴリズム『ディープ・バイナリー・ツリー(DBT)』を搭載している世界初のAIチップだそうです。

AiiRチップ

いまや集積回路の発達を言い表した『ムーアの法則』が崩壊しようとしています。ムーアの法則とは、Intel創業者の1人であるゴードン・ムーア氏が1965年に発表した「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という経験則のこと。これまではほぼこの法則に沿って集積密度が進化してきたといわれています。

ところが、ここに来て集積率の伸びは限界に達し、そのかわり回路の質が変わりつつあります。その理由は人工知能など解析処理に大規模な処理能力を必要とするものが次々と登場し、現在の集積回路だけでは処理しきれないものばかりになってきたからです。そこで登場したのが従来のCPUを補助するための補助用『演算回路』です。

例えば『GPU(Graphics Processing Unit)』 はディープラーニング処理には欠かせないものとなりました。もともとはコンピュータグラフィックに必要な演算を行うためのビデオチップとして開発されたもの。画像処理を主に設計されたため、従来のCPUに比べてコア数が膨大で、CPUのコア数は数個程度なのに対してGPUはコア数が数十から数千にもおよぶことから、解析演算を並列処理する能力に優れています。

また『FPGA(Field-Programmable Gate Array) 』と呼ばれる、目的に合わせてICの内部ロジックを変更可能なICチップも、GPUに比べて消費電力を抑えられることから、Amazon AWSやMicrosoft、IBMなど各社のクラウドなどに次々と採用されています。

そして『ASIC(Application specific integrated circuit) 』と呼ばれる特定用途向けに設計されたカスタムチップも登場、今回の『AiiR』はこれに当たります。

こうした状況から、通信量を抑えネットによる遅延なども回避させる手法として、膨大なデータによる学習部分はローカルに設置した『ASIC』で処理し、その結果から分析する部分のみをクラウドで処理させる『エッジコンピューティング』という手法が用いられるようになってきているんです。ちなみにこの『エッジコンピューティング』は『クラウド(雲)コンピューティング』に対して、別名『フォグ(霧)コンピューティング』とも呼ばれているそうです。

今回の『AiiR』もこうした『エッジコンピューティング』に特化して回路部分をチップ化してしまったので、これまでのようにクラウドにつなげて日夜計算している必要がなくなり、新たなデータもリアルタイムで入力しながら計算することができる画期的な『人工知能チップ』になっているというわけです。

デモンストレーションでは『倒立振り子』と呼ばれる、棒を押しても真っすぐに戻るようになる機械を、従来の人工知能による学習と『エッジAI』で比べたところ、これまでよりも3分の1の学習時間でみごとに振り子がまっすぐに戻るようになったということで人工知能チップの性能が証明されました。

すでに大手の自動車メーカーなど数十社が導入を決めているとのことで、これからは人工知能の分野もエッジコンピューティング用『AIチップ』の開発競争になっていきそうです。


[文・構成/土屋夏彦]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。

出典
エイシング プレスリリース

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