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宇宙ステーションで肉の印刷に成功!? 地球の食糧問題解決にも期待

By - 土屋 夏彦  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

ニッポン放送で『タモリのオールナイトニッポン』などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。

地球における食糧問題解決か!?宇宙ステーションで人工肉の培養に成功!!

先日、ロシアが国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が人工肉の培養に成功したことを発表しました。

今回この実験に協力したのは、イスラエルの食品技術のスタートアップベンチャー・アレフ・ファームズ社で、彼らはすでに昨年12月には、牛から摂取した細胞を培養することで牛肉の生成に成功しており、これをISSでも実験したところ、見事に宇宙空間でも成功したというものです。

発表によれば、従来宇宙食はおいしくないことで有名でしたが、最新技術によってどんどん革命がもたらされ、以前のような歯磨き粉のようなチューブから食事を絞っていたものから、いまでは宇宙飛行士はアイスクリームや新鮮な果物を食べ、液体の塩とコショウで食事の味付けもできるようになったそうです。

しかし、微小重力に耐えることができる食品の種類にはまだ制限があり、例えばパン粉など、食物の粒子が宇宙船の電気システムまたはエアフィルターを詰まらせる可能性があるものはすべて危険であると見なされるうえに、補給ミッションが失敗した場合に備えて、長期間保存できるものである必要もあるのだそうです。

そこでさまざまなハイテク会社がこの分野に参入。宇宙船にさまざまな食品を搭載させて宇宙での実験が繰り広げられてきました。そんな中の9月下旬、イスラエルの食品技術のスタートアップベンチャー『アレフ・ファームズ社』は、ロシア企業『3D Bioprinting Solutions社』が開発した磁気3Dプリンターの助けを借りて、宇宙での『肉の印刷』を初めて成功したということです。

資料によれば、これまでも宇宙での食物の製造実験は初めてではなく、2015年には国際宇宙ステーションでロメインレタスが栽培されています。 またアレフ・ファームズ社は、地上では、2018年12月から実験室で育てたステーキ肉の製造に成功。ただ今回の宇宙での実験では製造のプロセスをいくつか変更する必要が出てきたそうです。

まず肉の細胞を地球から約250マイル離れた軌道を周回する国際宇宙ステーション(ISS)のロシアセグメントに届けるために、牛の細胞と培養液をバイアル(vials=密閉容器)に閉じ込める必要がありました。容器がステーションに到着すると、ロシアの宇宙飛行士が3D磁気プリンターにそれらを挿入。その後プリンターはこれらの細胞を複製して人工肉の生成に成功。サンプルは宇宙飛行士に消費されることなく10月3日に地球に帰還したそうです。

今回の微小重力でも肉を3Dプリントで印刷(製造)できることが証明されたことは、宇宙飛行士にとってだけの朗報ではありません。

なぜなら通常2.2ポンド(約1キロ)ほどのステーキ(いわゆる食料品店で販売されている厚切り肉)を製造するには、最大5,2000ガロン(約2万リットル)の水が必要だといいます。ところが今回の培養肉の製造では、伝統的な畜産農業の約10分の1の水と土地で済み、さらに製造期間もより速くなることが証明されたというわけです。

また、「重力が微弱な状態でも3Dプリンタで生成することができたということは、これからはどんな場所でも食料を生産することができることを意味している、すなわち地球における食糧問題に対する回答である」と3D Bioprinting Solutions社のプロジェクトマネージャー、グレゴリー・シャルノブ氏は話します。『この実験でこれまで考えていたことがすべて実証できた』というわけです。

NASAは将来的には、月を周回できる宇宙ステーションとして提案されている『ゲートウェイ(Gateway)』で、レタス、イチゴ、ニンジン、ジャガイモを生産できる『スペースガーデン(space garden)』を計画中。将来的には月や火星での生活やさらなる深宇宙への旅の際のタンパク源にしていきたいということでさらなる夢が膨らみます。


[文・構成/土屋夏彦]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。『三宅裕司のヤングパラダイス』『タモリのオールナイトニッポン』などのディレクターを務める傍ら、『十回クイズ』『恐怖のやっちゃん』『究極の選択』などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 『ソネットチャンネル749』(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ『Livly Island』では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。

出典
アレフ・ファームズ(Aleph Farms)Astronauts just printed meat in space for the first time — and it could change the way we grow food on Earth宇宙で肉を「印刷」…どんな場所でも食料は生産できるAleph Farms to produce the first slaughter-free meat in space with 3D Bioprinting Solutions

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