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『孤独死』の現実をミニチュアに 遺品整理業者の想いに考えさせられる

By - いとう舞香  公開:  更新:

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生き延びたペットに遺族が「殺処分してください」

いとう

私は動物と暮らしているので、ペットを遺した孤独死の話を聞くと、とても胸が痛みます。
絶対に大丈夫なんてことはないですし、「自分も将来そうなったらどうしよう」と思ってしまうんですよね。
一人暮らしでペットと生活する人がいたとして、いくら若くても突然病気で倒れたらそうなってしまうかもしれないですし…。

小島さん

ペットを飼ってる方の孤独死もすごく多いです。特に多頭飼い。
そして、実はこういうのって、犬より猫のほうが引き取り手が見つからないパターンが多いんです。

小島さん

私の実家に、孤独死の現場から保護した『レオさん』っていう猫がいるんですけど、元々は急性アルコール中毒で亡くなった20代の男性と暮らしていたうちの1匹で。
当時、猫についてご遺族に相談をしたら、「我が家は犬がいるから飼えない。5匹の猫は保健所で殺処分してくれ」っていわれたんです。

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突然飼い主が息絶え、遺された猫たち

押し入れの中には黒猫の姿が

小島さん

でも、命をそんなに軽く扱うなんて考えられなかったので、「では、こちらで新しい飼い主を探します!」っていって。
人によってはアレルギーや金銭的な理由など飼えない事情があるんでしょうけど…せめて、自力で里親を探す努力はしてほしいなって思います。

いとう

動物も尊い命なのに、物と同じように「処分してくれ」だなんて悲しすぎますよね。
遺された動物は本能で「生きたい」と思って、致し方なく飼い主の遺体を口にしたり、共食いしたりと必死にもがいたわけで。
地獄を乗り越えてせっかく生き残ったのに、人間の判断であっさりと殺処分されるだなんて、あってはならないことだと思います。

小島さん

本来、遺されたペットの里親を探すのは仕事内容に含まれてないんです。
でも、私たちの仕事って生死に向き合うものなので、どうしても遺された動物に「生きてほしい」と思ってしまうんですよね。

キッチンには猫のエサのゴミ。床を見るに、飼い主はここで息絶えたのだろう

いとう

アニマルホーダー(※)はゴミ屋敷に住んでいる人も少なくないそうです。そして多頭飼育崩壊につながってしまう…。
精神疾患による行動を自力で止めるのは難しいでしょうし、こちらも孤独死同様に、周囲の人が気付いて福祉につなげることが重要ですね。

小島さん

そういう人って1人で住んでいて、さびしくて動物を1匹飼ったらもう1匹飼いたくなって…というように増えすぎてしまうのがほとんどで。
「去勢や避妊の手術なんてかわいそう」って主張する人もいますけど、度を過ぎた繁殖は止めないと、もっとかわいそうな未来が待ってるわけですし。

小島さん

鳴き声や異臭で近隣の人が気付いて、行政機関に連絡してもらえたらベストなんですが…。
繁殖しすぎて「これ以上は世話をできない」と思ったら、早めに助けを求めてほしいですね。

「家庭を持てば孤独死を回避できる」は本当?

いとう

きっと、ここまで読んだ人が気になったのは「じゃあ、どうすれば孤独死を回避できるの?」という点だと思います。
実際、孤独死を100%回避できる方法ってあるのでしょうか?家庭を持つことですかね…?

小島さん

よく「孤独死したくなければ結婚しろ!」って聞きますけど、全然関係ないと思います。どちらかというと結婚をしていて、子供がいるのに孤独死する人のほうが多いんですよ。
なんでかっていうと、両親やパートナーが亡くなって、お子さんは結婚や仕事で離れた場所に行ってしまうと、必然的に自分1人になっちゃうんですよね。

いとう

小島さんの著書では、二世帯住宅での孤独死について書かれていましたね。
二世帯住宅なんて、もはや同じ家に住んでいるようなものじゃないですか。「本当にそんなことがあるの!?」と衝撃を受けました。

裕福な人でも、家族と二世帯住宅に住んでいても、孤独死は起こる

小島さん

私もその現場に立ち会うまで「二世帯住宅なのに!?」ってショックでした。
一緒に住んでいても、ちゃんと普段からコミュニケーションをとっていかないとダメなんだなって思い知らされましたね。

いとう

『孤独死』という言葉の響き的に「その人が自ら孤立して亡くなった」という感じがするんですけど、問題があるのは孤立せざるを得なくなった「我関せず」な社会のように思います。
近所の付き合いがないことや、進む核家族化とか…現代社会が孤独死やゴミ屋敷といった問題の根本なのかもしれませんね。

ミニチュアを通して、たくさんの人に知ってもらいたいこと

いとう

今日は貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!多くの人にとって、自分の今後について考えるきっかけになったと思います。
最後に、記事を読んでいる人に向けたメッセージをお願いします。

小島さん

今は幸せに暮らしていても、この毎日が当たり前とは思わず、1日を大切に過ごしてもらいたいです。
誰か大切な人が身近にいると、その大切さが薄れてると思うんです。改めて大切な人をもっと気遣ってあげたりとか、会話をしたりとか。失ってからでは遅いので…。

小島さん

そして、大切な人だけじゃなく自分が突然死ぬ可能性もあるので、自分の『やりたいこと』を意識しながら、後悔のない人生を送ってもらえればいいなって思いますね。

人々の心に訴えかける『時が止まった部屋』

これらの『時が止まった部屋』を見て、あなたは何を感じましたか。目を背けたくなったり、それでも「自分はこんなことにはならない」と思ったりした人もいるでしょう。

命あるものは、いつか必ず終わりを迎えます。死は平等であり、誰がどのようにして人生に幕を下ろすのかは、最期の瞬間まで分かりません。

健康でキレイ好きの人が心身の病気を患い、ゴミ屋敷の住人になることもあります。裕福な暮らしをしてきた人が、誰にも気付かれず自宅で亡くなることもあるのです。

死を恐れるのは当たり前のこと。しかし、孤独死の増加を防ぐには、一人ひとりが目をそらさずに死と向き合い、考え、行動する社会にすることが必要ではないでしょうか。

時が止まった部屋:遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし

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[文・構成/grape編集部]

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