「これは便利!」「意外とおいしい」 非常食が想像以上に進化していた
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みなさんは日頃から、非常持ち出し袋を準備していますか。防災非常袋ともいいますが、地震などの災害時にはこの袋を持って出ればOKというもので、中には水や非常食などを入れておきます。
なんとなく味がイマイチなイメージの非常食ですが、最近では味を工夫するなどの技術が発達し、「非常時でなくても利用したい」と思えるようなおいしい製品が多数登場しています。
特に非常時は、腹持ちがよくて力も出る米がお勧めですが、どんなものを選べばいいか迷う人もいるでしょう。
そこで、世界で初めて『アルファ米』を開発した、尾西食品株式会社(以下、尾西食品)に取材しました。
アルファ米とは?
長期保存ができるため、非常食に利用されることが多いアルファ米。
そもそも生米に含まれるデンプンは、消化しにくいベータ化した状態になっており、人間は食べても栄養を吸収できません。そのため、米を水に浸して炊くという加熱調理を行います。
加熱調理をすることで、デンプンは消化しやすいアルファ化した状態になります。
つまり炊飯というのは、米を柔らかくて食べやすく、かつ消化しやすい状態にする作業なのです。
※写真はイメージ
ところが、ご飯が冷めると、デンプンはまたベータ化の状態に戻ってしまい、カチカチになります。これは加熱調理によってアルファ化したデンプンが、またベータ化した状態なのです。
炊いたご飯が冷めて消化しにくくなったら、それを長期保存しても仕方ありません。
これを解決するのがアルファ米です。簡単にいえば、炊きたてのご飯を急速乾燥したものです。
水分をコントロールしながら急速乾燥させると『アルファ化状態』を保てます。
時間が経っても、水やお湯を加えると食感を取り戻し、消化しやすいおいしいご飯に戻るのだそうです。
アルファ米はフリーズドライのぱさぱさ感がなく、しっかりと食感のあるモチモチご飯が食べられるのが大きな特徴。
尾西食品の創業者である尾西敏保さんは、世界で初めて長期保存が可能なアルファ米を開発した人で、同社はこの技術を生かして多彩な非常食を生み出しています。
お勧めのおいしい非常食5選
尾西食品のアルファ米を使った米食メニューは、水またはお湯を注ぐだけで食べられる優れものです。
ここからは、アルファ米を用いたおいしい非常食を5つ紹介します。非常食を選ぶ際の参考にしてみてくださいね。
『尾西のたけのこごはん』
非常食の中でも、このタケノコご飯は特に優れた出来映えだといいます。タケノコのしゃきしゃき食感とだしの利き具合が絶妙とのこと。
水で作ると調理時間は60分間、お湯なら15分間と長めですが、待つ価値は十分にあるでしょう。
ほかには、白米、五目ごはん、わかめごはん、きのこごはん、山菜おこわ、赤飯、ドライカレー、松茸ごはん、チキンライス、エビピラフがあります。
『一汁ご膳』シリーズ
ご飯とレトルトの汁物がセットになった非常食で、汁物には『けんちん汁』『豚汁』の2種類があります。
ご飯は水、またはお湯で戻しますが、水がなくてもスープの汁を使ってご飯を戻すことができます。スプーンが付いているので非常時にも安心です。
『にぎらずにできる携帯おにぎりシリーズ』
水またはお湯をパッケージに注いて、約20回ほどよく振って、ご飯と具材を混ぜ合わせます。
熱湯で15分、15℃の水の場合は60分を目安に待ってから食べます。鮭、わかめ、五目おこわ、昆布の4種類があり、もちもち感のあるおにぎりが食べられますよ。
『エスニックシリーズ』
最近ではエスニック料理が日本でも人気で、ずいぶんポピュラーになりました。
アルファ米を用いた非常食のラインナップにもエスニックなメニューが登場しました。ナシゴレンとビリヤニの2種類があります。
『CoCo壱番屋監修 尾西のカレーライスセット』
有名カレーチェーン店『CURRY HOUSE CoCo壱番屋』とコラボした製品で、レトルトカレーとアルファ米がセットになった1食。
アレルギー物質28品目不使用で、アレルギーに注意したい人の非常食としてお勧めです。辛さ控えめの『マイルドカレーライスセット』もあります。
アルファ米を用いた製品ではありませんが、パンもラインナップされています。
『ひだまりパン』
開封するだけでしっとり食感を味わえるミルク風味の保存パン。パネトーネ種に含まれる乳酸菌、気密性の高い包材と脱酸素剤により、長期保存が可能となっています。
プレーン、メープル、チョコの3つの味があり、非常時にもパンを食べたいという人にお勧め。
昔に比べて非常食がおいしくなっている理由とは
上掲のとおり、2023年現在では非常食も多種多様な製品が出ており、さらにおいしくなっています。
このおいしさの秘密はどこにあるのでしょうか。尾西食品に聞いてみると…。
これまでアルファ米は行政や企業の備蓄が中心でしたが、近年、個人消費も伸びています。災害時のみならず、アウトドアや旅行など日常的に利用するケースも増えているためです。
飽きずにおいしく食べていただく機会が増えたのも、非常食の種類やバリエーションが豊富になった理由の1つでしょう。
技術と製法の点では、アルファ米は炊いた米を急速乾燥させたもので、お湯や水を加えるだけで、炊きたてのごはんのような食感やうま味が味わうことができます。
さらに、製品パッケージは酸素を通しにくい素材を使用。脱酸素剤も封入しており、米の味わいが守られています。このような工夫がおいしさの理由になっています。
キャンプなどで非常食を利用する人も増えており、多彩なニーズに応えることが非常食をおいしくする原動力になっているというのはうなずけますね。
非常食の開発で工夫している点とは
尾西食品に非常食の開発で工夫している点を聞いてみたところ、以下のような回答がありました。
誰にとっても安心安全の非常食をお届けするという理念の下、アレルギー対応(アレルギー物質28品目不使用)、ハラール対応食も多数展開しています。
最近は、アルファ米とカレーライス、レトルトスープなどを合わせ、1食で食事として利用できる製品も発売しています。
アルファ米製品の種類やバリエーションを取りそろえ、災害時にも日常時にも飽きずにおいしく食べられる製品の開発にも力を入れています。
日本も多様性に富んだ社会を目指して、『ダイバーシティ』という言葉が流行しました。
非常食でも状況は同じのようです。例えば「宗教的な問題で食べられない」ということがないようにハラール食にも注力しているとのこと。
アレルギーフリーの非常食が登場しているというのも、多様な人への対応ということですね。
みなさんも非常持ち出し袋の中には、おいしい非常食を入れておいてはいかがでしょうか。
[文/高橋モータース@dcp・構成/grape編集部]