ホントは何でもありなんです!? 神社の作法今昔
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王政復古の大号令による日本宗教界の大激動
明治初期の王政復古の大号令のもと、多くの寺院が神社に「鞍替え」もしました。多武峰妙楽寺は談山神社に、讃岐の象頭山松尾寺は金比羅宮に、金亀山与願寺は江ノ島弁天神社に、といった具合です。そればかりか、法隆寺も高野山も、それぞれ聖徳神社、弘法神社という神社になりかけたのです。
明治政府は、大宝律令以来の神祇官制度を復活させ、全国の神社を神祇官(のちに教部省)のもとに統一させました。神社は全て国家の宗祀とされ、仏教宗派も含めた「大教院」が組織されました。しかし、仏教宗派の相次ぐ離脱で明治8年には早々に解散してしまいます。
神道系の神官・神社・教派はこの頃、大国主命の扱いを巡り大論争と対立(祭神論争)が勃発、これによりいわゆる神社神道と教派神道が分離分裂、この両派をもって国家神道体制が出来上がりました。
神社神道の指導組織「神道事務局」は各神社が独自におこなっていた儀式所作も統一することとしました。
明治8年の式部寮による「神社祭式」ではただ「再拝拍手」とのみ記され、当時内務卿の伊藤博文は「一揖(いちゆう・浅い礼)再拝二拍手一揖」を正式な作法とし、概ね現代の形に近いものが推奨されてはいたようです。
これが、明治40年の改訂を経て、戦争に全国民が巻き込まれていく昭和17年の「神社祭式行事作法」での改訂では宮中の作法に倣い、拍手が禁止されてしまいます。再拝にはじまり再拝で終える作法となりました。
そして終戦後、昭和23年、再び「神社祭式行事作法」が改正され、このときに祝詞奏上の作法は現行の「再拝→祝詞奏上→再拝→二拍手→一拝」のかたちにようやく定められました。
現在、神社が一般参拝者へ説明・指導している「二拝二拍手一拝」という作法は、この昭和23年の神社祭式行事作法に基づく、新しいものなのです。
また、先述したようなさまざまな拝礼法の説があるのは、神社神道に属さず独立して宗教教団となっていた教派神道の神道十三派(黒住教・出雲大社教・扶桑教・御嶽教・金光教・天理教など)は独自の拝礼法を護持・推奨していたために、さまざまな神拝作法が存在するわけです。
とはいえ、以上述べてきた変遷はあくまで神職の作法であり、一般人に対するものはありません。基本的には一般人は実は格式ばらず、江戸時代以来の自由な参拝の仕方で一向にかまわないのです。
拝み方もそれぞれ
じゃあ、二礼二拍手しなくていいの?
拍手の起源を見ると魏志倭人伝には倭(古代日本)の風習として「見大人所敬 但搏手以當脆拝」と記され、貴人に対し跪拝礼ではなく手を打って敬っていたとされています。
奈良時代には、持統天皇の即位の折、人々が手を打ち祝福した、という記述があります。
皇后、即天皇位す。公卿百寮、羅列りて匝く拜みたてまつりて、手拍つ。(日本書紀巻第三十・高天原広野姫天皇 持統天皇 四年春正月戊寅朔)
このように、古くより日本独自の拝礼作法として、神様や貴人を敬い拝む時に拍手が用いられました。平安時代から大陸との交流による影響で、宮中ではこの作法は行わなくなり、ただ二拝のみをするようになったことが文献からあきらかですが、神前の儀式では変わらず拍手が用いられてきました。
普段の生活での挨拶は普通は一回です。しかし同じ所作を繰り返すことにより、現実を超越した神様との交感の場を簡易的に生み出す呪術的な手法。祈りのスイッチを入れる所作であるともいえます。 自分にとってもっともしっくり来る作法を取ってかまいませんし、その神社が推奨する作法に従うのが安心だと感じるのなら、こだわりなく従うのもいいでしょう。ふざけているのでなければ間違えたからと言って罰が当たるというものでもありません。
神様への畏敬の気持ちがあるのなら、江戸以前の自己流作法の参拝もあり。堅苦しく考えず、気軽に神社を訪ねましょう。
ただ、お寺であれ神社であれ、聖域に入る前に手水舎で俗世の穢れををすすぎ落すことは是非欠かさずに。こればかりは神仏に対する最低限の礼儀となります。
参拝前には手水舎へ
参考文献
神道の成立(高取正男・平凡社ライブラリー)
古神道は甦る(菅田正昭・橘出版)
神道の本(学研)
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