磁石で動く超小型ロボット『マイクロボット・オリガミ』が単一細胞の捕獲に成功

By - 土屋 夏彦  公開:  更新:

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アメリカのノースカロライナ州立大学とデューク大学の研究者らが、超小型ロボット『マイクロボット・オリガミ(Microbot Origami)』をプログラムして、単一細胞を捕獲および移動させることが可能であることを実証したと発表しました。

『マイクロボット・オリガミ』は微小なポリマー(高分子)製の立方体でできていて、一辺がナノメートル程度の大きさということですから、1ミリの1万分の1くらいの大きさの非常に小さいもの。その1面が金属でおおわれており、これを磁石で制御して折り紙のように、開いたり閉じたり、自由自在に形を変形させることができるそうなんです。

パックマンのように細胞を捕獲する仕組み

その操作で、まるでパックマンのようにオリガミをパクパクさせるこことで、人間の細胞の中を動き回って、1つの酵母細胞を捕獲し、移動させる仕組みが完成したということです。

細胞を「つかむ」という動作をこれほど小さなスケールで実現したのは、今回が初めてのことだそうです。磁石による外部操作だけで開閉を制御できる点も、実用化に向けた大きな強みといえるでしょう。

MITのオリガミロボットが切り開いた道

実は2015年にマサチューセッツ工科大学(MIT)がこのオリガミロボットを発表し、そこからインスピレーションを受けたロボットや、血液の中を泳ぐ小さな医療用ロボットが多数開発されています。

MITの発表以降、わずか数年でさまざまな応用研究が世界各地で進んでいます。折り紙という日本の伝統文化が、最先端医療の発想源になっているのは興味深いところですね。

例えば、MITと東京工業大学らは、胃の中のボタン電池などを磁力で捕まえる『飲み込めるロボット』を開発。アメリカではボタン電池を飲み込んでしまう事例が年間3500件も発生しており、そんな時に氷で包んだオリガミロボットを胃に送り込み、そこで折り紙部分を展開。マグネットでボタン電池をとらえる実験に成功しています。

手術なしに体内の異物を取り出せる可能性があるという点で、特に小さな子どもへの応用が期待される技術といえそうです。

魚型マイクロロボットが血液中の毒素を中和

また2017年2月には、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、短時間で大量に3Dプリントできる微小な魚型ロボットを開発。マイクロフィッシュの尾ビレにはプラチナのナノ粒子が多数埋め込まれており、過酸化水素と接触すると尾が動いて前進。

また、頭部には酸化鉄のナノ粒子があるため、魚の群れを磁気で操作することが可能。さらに魚全体に例えば毒素を中和する素材をちりばめることで、汚染された血液などに入れると、正しい場所まで持っていってから毒素を中和させることに成功しました。

移動・操作・治療をひとつのロボットで同時にこなすという発想は、体内医療の考え方を大きく変えるものだったといえるでしょう。

「捕獲する」動きを実現した今回の発展

ただそのどれもが、マイクロボットそのものを移動させたり、マイクロボットを使って体内の異物を移動させたりすることはできても、パクパクして何かの異物を採取するような動きまではできなかったわけです。

移動と捕獲は、一見似ているようで技術的にはまったく別の課題です。細胞を傷つけずに包み込む「やさしいつかみ方」を実現するのが、特に難しかったようです。

今回はそれを発展させ、自由に形状を変えることを活用して、細胞などを取り囲むことが可能となったため、このことで例えば、がん細胞のような特定のタイプの細胞の応答を調べるためのマイクロツールとしての活用ができることになります。

特定の細胞だけを選んで取り出し、その場で反応を観察できるとなれば、がんの早期診断や新薬の開発にも影響を与えそうです。

自然のタンパク質の動きをロボットが模倣

ちなみに研究者の説明によれば、このオリガミロボットをたたんだり広げたりするしくみは、自然を模倣しているといいます。

それはプロテインがまったく同じような動きをすることからヒントを得たからなんだそうです。またタンパク質がアミノ酸配列を折り畳む時もほとんど同じ動きをするそうです。自然のしくみにまたロボットが一歩近づいたともいえるのではないでしょうか。

今後は磁石などで外からの操作をしなくても、マイクロボット自身が人工知能などで動くようにしていきたいということです。

自律的に動くマイクロボットが実現すれば、医師が体外から操作しなくても、ロボット自身が体内の異常を見つけて対処するという未来も、遠い話ではなくなるかもしれません。

30年以内に人間と機械が一体化する?

マイクロボットなどITの世界的権威であるレイ・カーツワイル氏の著書『シンギュラリティは近い(洋題:Singularity is Near)』によれば、これから30年以内にナノテクノロジーによって「人間の脳のメカニズム」がすべて解明され、脳の認知、メモリ・感覚機能を拡張することができるようになり、映画「マトリックス」のように、人間と機械(マイクロボット=ナノテクノロジー)は一体化されると予言しています。

つまり、人間の体のメカニズムはすべてナノテクノロジーで制御可能になるというわけです。がんを始めとするさまざまな難病について、こうしたテクノロジーによって、原因が解明され、克服されるとしたら、一刻も早くしてそうなって欲しいと思います。


[文・構成 土屋夏彦/grape編集部]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。

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出典
Microbot origami can capture, transport single cells

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