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駅の改良工事中、天井から90年前の役者の魂が出てきた!

By - grape編集部  公開:  更新:

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2015年10月から行われている銀座線のリニューアル工事。今回は田原町駅の現場を訪ねました。田原町駅は、料理の道具なら何でもそろうといわれる「かっぱ橋道具街」の玄関口。これにちなんで、「道具の街」をコンセプトにリニューアル工事が進行中です。

90年前につくられた駅を、果たしてどう料理しているのか? さっそく現場をみていきましょう!

田原町駅の出入口は、90年前のデザインを取り入れる!

田原町駅の工事担当、高見沢仁志さん

田原町駅のリニューアル工事を統括するのは、高見沢仁志さん。まずは、2番出入口に案内してもらいました。

ここは、90年前の開業当時の駅出入口が再現されることになっています。ちなみに、屋根の上の丸い東京メトロのマークは、東京メトロの前身、帝都高速度交通営団時代の名残を感じる少し懐かしいもの。

駅出入口の完成イメージ。東京メトロのマークは四角くなっている

どこからでも分かりやすいように、各駅とも四面にマークのついた形のものに変わってきています。もちろんリニューアル後の田原町駅も四方から見ることができる形に変わるので、貴重なタイミングで撮影をすることができました。

駅構内に降りてみると、既に2番出入口は壁と床のタイルが剥がされている状態。リニューアル後は、昭和モダンを感じさせる出入口を通って、ここへ下ってくることを想像するだけでも、ちょっとワクワクしますね。

新しい2番出入口は、2017年10月から11月ごろには完成予定とのこと。90年前の姿が、果たして2017年の東京の街並みにどのように溶け込むのか、期待が高まります。

90年前の役者魂「芸能紋」が、ホームに残っていた!

次に高見沢さんに案内してもらったのは、ホームの仮囲いのなか。そこには田原町駅のシンボル、芸能紋(歌舞伎役者などの家紋のこと)が!

これまでも田原町駅のホームには、鋳物(いもの)でつくられた芸能紋が飾られていました。その鋳物製の芸能紋は、駅の設計を担当した建築家が、開業当初に漆喰でつくられていた芸能紋を型にして、昭和58年に設置したもの。

開業当時の芸能紋(所蔵:地下鉄博物館)

開業当初の芸能紋は、数十年前の駅改良工事の際に無くなったものと思われていました。しかし今回、天井・壁のリニューアルに当たって、前面のカバーを外してみると…?

なんと、90年前の芸能紋が再び姿を現したのです! この紋には、尾上菊五郎のものだということが書かれていました。昭和初期ですから、これは後に演劇の神様とまで呼ばれた六代目のもの。

こちらは「丸に三つ銀杏」と書かれていますが、下のプレートには松本幸四郎の文字。しかし、現在残っている注釈が正しいか確証が得られていないものも多く、新たに調査をしてつけ直さなければいけないものもあります。

リニューアル後は、この90年前の芸能紋と名前のプレートが、ガラス製のショーケースに収められて、展示される予定になっています。90年前の役者さんの魂のようなものを、再び目にすることができるというわけですね。

実は、現在も仮囲いのなかではありますが、ホームから芸能紋を見ることができるんです。ショーケースに入ってしまう前に芸能紋を見られる貴重な機会。田原町駅を訪れるときには、芸能紋を探してみるのもオススメですよ。

深夜の田原町駅に現れる、工事中だけの特別な舞台!

駅構内の線路には舞台のようなものが登場していました。これは、銀座線のレール幅1435mmに合わせて特別につくられたという工事用の移動式足場。その名もメトロステージです。これは、ホーム天井部分の工事作業をするためのもの。

メトロステージはなんと、2階建て! 田原町駅の工事時間は、深夜1時~4時の約3時間に限られるので、10分弱でサッと組み立てて、すぐに工事に取り掛かっていきます。このステージのお陰で、天井の工事が円滑に行われていきます。

田原町駅の工事は、「天井の取り外し、壁、床、天井の仕上げ」という順番で行われていきます。しかし、深夜は車両が滞泊しているので、天井工事で車両を傷つけることが無いよう、車両にカバーをかけながら、慎重を期して二重天井をつくるための作業が進められていきます。

ホーム完成イメージ図

リニューアルのあかつきには、壁面はクールな金属の織物のようなデザインが施される予定。田原町駅に降りた瞬間から、リニューアルコンセプトである「道具の街」というシンボリックな空間が生まれます。

工事は臨機応変に!

そんな「道具の街」をつくるにあたって、作業関係者泣かせのハプニングもおこっていました。

当初は指でつまんでいる部分にボルトを埋め込み、金属を固定する予定だった

コンクリート内部の鉄筋にぶつかり、ボルトを埋め込むために必要な奥行きが確保できず、予定していた場所にボルトを埋め込むことができなかった場面も。そんな時は、現場で臨機応変に対応する必要があります。

この時は、ボルトの埋め込み位置を変更し、固定する予定の金属を上下逆さにして固定する方法をとっていました。

ほかにも、漆喰でつくられた90年前の芸能紋は、老朽化が進んでいるので、柱から剥がれ落ちたり、欠けたりする恐れがあるので対策としてカバーをつけて展示をする予定。また、長い間カバーで覆われていたとはいえ汚れもあるので、芸能紋を傷つけることのないように慎重にクリーニングをするそうです。

実際に現場で作業をはじめると、想定外のことが起こるのがリニューアル工事なのかもしれません。それをさまざまな工夫や技術で乗り切っているんですね。

山場はこれから!連絡通路は配線を収納できる?

高見沢さんが、出入口と共に難工事になるだろうと予想しているのは、ホームから線路の下をくぐって、1番ホームと2番ホームをつなぐ連絡通路です。天井に広がっている配線を二重天井のなかに収めることが難しいのだそう。

すでに壁のタイルが剥がされ、工事に入っていますが、天井は配線がむき出しのまま。当初、配線は画像右上、斜めになっている天井部分にすべて収められていたのですが、駅の設備が拡充されていくなかで、配線が増えてしまいました。今後、ホームドアの整備が進められることもあり、さらに配線は増えていく見込みです。

「まずはホームの工事が終わらないとココには手を付けられない」とは高見沢さんの言葉。

道具街をはじめとする下町の職人さんの手仕事感を表現したいと意気込む高見沢さん。田原町駅も毎晩50~60人の作業員の皆さんによる手仕事によって、一歩ずつリニューアルが進行しています。そこには、さまざまな制約やハプニングを乗り越えていく姿がありました。

レトロな出入口や、芸能紋に90年前の痕跡を感じながら、金属を織り込んだ壁面などで「道具の町」を表現するリニューアル後の田原町駅。今年秋から冬にかけて、東京・下町に「訪れたくなる駅」がまた一つ増えそうですね。

書いたひと:望月崇史(もちづきたかふみ)

1975年静岡県生まれ。放送作家。 ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは足かけ15年、およそ4500個! 放送の合間に、ひたすら好きな鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。 ラジオの鉄道特番出演、新聞・雑誌の駅弁特集でも紹介。 現在、ニッポン放送のウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載中。


[文・構成/grape編集部]

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2017年12月30日で上野駅〜浅草駅間の開通90周年を迎える「地上にもっとも近い地下鉄」である銀座線は、現在「伝統×先端の融合」という路線コンセプトを軸としてリニューアル工事を進めています。そんな銀座線に関するさまざまな情報を発信するWebサイトです。 ⇒http://www.tokyometro.jp/ginza/

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