しゃっくりを止めるメカニズムがついに解明された!? By - 土屋 夏彦 公開:2019-07-10 更新:2019-07-10 土屋夏彦 Share Post LINE はてな コメント ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。 しゃっくりを止めるメカニズムがついに解明された!? 一度始まるとなかなか止まらないしゃっくり。これまで正しいしゃっくりの止め方は、医師の間で決まったものはなかったそうです。 grapeの以前の記事でも、こう書いてありました。 しゃっくりは横隔膜の不随意的なけいれんによって出現する現象。横隔膜を支配する横隔神経や、延髄にある呼吸中枢の刺激によって出現するといわれています。ところが、なんのためにこんな現象が起こるのかは、分かっておりません。 お腹がいっぱいになったり、お酒を飲んだり、熱いものは刺激物を飲みこんだ時に症状が起きることがありますが、一般的に原因は不明だということです。 そんな中、福岡県久留米市にある聖マリア病院の呼吸器外科、大渕俊朗(おおぶちとしろう)医師らのグループが、重症患者でもしゃっくりが止まるメカニズムを解明できたと英国と中国の科学専門誌『The Clinical Respiratory Journal』に論文を発表しました。 論文のタイトルは『CO2を貯めること:これがしゃっくりを止める鍵(CO2 retention: The key to stopping hiccups)』というもの。発表したのは昨年2018年5月だったのですが、このほどこの論文がさらに各国の専門誌でとりあげられたことから改めて話題になっています。 その方法とは、袋をくちに付けて自分が吐いた息を繰り返し吸うことで重症でも3分〜6分前後で改善されることを確認したものです。 しゃっくりが出る原因は、喉周辺への何らかの刺激が引き金になって横隔膜の呼吸運動を調節する中枢神経に異常が起き、その結果、無意識に強く息を吸うことを繰り返し、しゃっくりになる事が多いそうです。 人によっては1か月も続く重症患者さんもいて、睡眠障害やうつ状態につながるケースもあるということで、たかがしゃっくりと軽く考えてはいけません。 今回の研究では、CO2を(体の中に)ためた時に効果を調べるために、健康な男性ボランティアに、『ブッチ法(Bucci)』と名付けられた異なる3つの再呼吸実験を実施するよう依頼しました。 20リットルのビニール袋にただの空気が入ったものを吸ったり吐いたりする 20リットルのビニール袋に空気が入っているが1.5×1.5cmの穴があいている袋で吸いたり吐いたりする 20リットルのビニール袋に酸素が入っているものを吸いたり吐いたりする それぞれについて、呼気時の血中CO2濃度および吸気時の血中CO2濃度を、ボランティアがあきらめるまで測定したそうです。 その結果、どの場合でも吸気時の血中CO2濃度が呼気時の血中CO2濃度と同じ濃度に増加していき、どちらもおよそ50mmHgに達した時にしゃっくりが止まる事が分かりました。 つまり通常低いはずの動脈のCO2濃度が変化し、静脈のCO2濃度と同じ(50mmHg)になるとしゃっくりが止まることがはっきり分かったということです。このことは動静脈が同じ濃度になることで大脳が窒息回避の指令を出し、横隔膜などの運動を抑制させたと分析したそうです。 もともとこれまでも血中のCO2濃度を高めることが効果的であることまでは分かっていましたが、具体的なメカニズムまでは分かっていませんでした。また息を吸いすぎて血液がアルカリに傾き、手足がしびれ、ひどい場合は失神することもある『過呼吸』を起こした時の処方についても、口に袋をあてがって、腹式呼吸でゆっくり自分の息を吐いて、その吐いた息を吸うことが効果的であるといわれてきました。 でもそれがなぜ効果があるのかまでは分かっていなかったそうです。ここまで具体的なしゃっくりのメカニズムが解明できたのは、今回が世界初になるのではないでしょうか。 ただし一般的にはしゃっくりは個人差があるため、原因もさまざまで、すべてがこれで解決できるとは限らないということですが、こうした日常的におこりがちな体の不思議については、研究者の皆さんにこれからももっと積極的に解明していってほしいです。 [文・構成/土屋夏彦] 土屋夏彦 上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。 ダルビッシュ有が日本に帰国 向かった先は…?2024年11月12日、メジャーリーグの『サンディエゴ・パドレス』に所属するダルビッシュ有選手が、自身のブログを更新。日本に一時帰国していたことを明かしました。 俳優・火野正平さんが逝去 腰痛の治療に励むも腰部骨折に火野正平さんが亡くなったことが分かりました。ご冥福をお祈りいたします。 出典 発表論文:The Clinical Respiratory Journal CO2 retention: The key to stopping hiccups/しゃっくりが止まるメカニズム解明 聖マリア病院の大渕医師(西日本新聞)/大渕俊郎医師/Journal of Thoracic Disease Share Post LINE はてな コメント
ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。
しゃっくりを止めるメカニズムがついに解明された!?
一度始まるとなかなか止まらないしゃっくり。これまで正しいしゃっくりの止め方は、医師の間で決まったものはなかったそうです。
grapeの以前の記事でも、こう書いてありました。
しゃっくりは横隔膜の不随意的なけいれんによって出現する現象。横隔膜を支配する横隔神経や、延髄にある呼吸中枢の刺激によって出現するといわれています。ところが、なんのためにこんな現象が起こるのかは、分かっておりません。
お腹がいっぱいになったり、お酒を飲んだり、熱いものは刺激物を飲みこんだ時に症状が起きることがありますが、一般的に原因は不明だということです。
そんな中、福岡県久留米市にある聖マリア病院の呼吸器外科、大渕俊朗(おおぶちとしろう)医師らのグループが、重症患者でもしゃっくりが止まるメカニズムを解明できたと英国と中国の科学専門誌『The Clinical Respiratory Journal』に論文を発表しました。
論文のタイトルは『CO2を貯めること:これがしゃっくりを止める鍵(CO2 retention: The key to stopping hiccups)』というもの。発表したのは昨年2018年5月だったのですが、このほどこの論文がさらに各国の専門誌でとりあげられたことから改めて話題になっています。
その方法とは、袋をくちに付けて自分が吐いた息を繰り返し吸うことで重症でも3分〜6分前後で改善されることを確認したものです。
しゃっくりが出る原因は、喉周辺への何らかの刺激が引き金になって横隔膜の呼吸運動を調節する中枢神経に異常が起き、その結果、無意識に強く息を吸うことを繰り返し、しゃっくりになる事が多いそうです。
人によっては1か月も続く重症患者さんもいて、睡眠障害やうつ状態につながるケースもあるということで、たかがしゃっくりと軽く考えてはいけません。
今回の研究では、CO2を(体の中に)ためた時に効果を調べるために、健康な男性ボランティアに、『ブッチ法(Bucci)』と名付けられた異なる3つの再呼吸実験を実施するよう依頼しました。
それぞれについて、呼気時の血中CO2濃度および吸気時の血中CO2濃度を、ボランティアがあきらめるまで測定したそうです。
その結果、どの場合でも吸気時の血中CO2濃度が呼気時の血中CO2濃度と同じ濃度に増加していき、どちらもおよそ50mmHgに達した時にしゃっくりが止まる事が分かりました。
つまり通常低いはずの動脈のCO2濃度が変化し、静脈のCO2濃度と同じ(50mmHg)になるとしゃっくりが止まることがはっきり分かったということです。このことは動静脈が同じ濃度になることで大脳が窒息回避の指令を出し、横隔膜などの運動を抑制させたと分析したそうです。
もともとこれまでも血中のCO2濃度を高めることが効果的であることまでは分かっていましたが、具体的なメカニズムまでは分かっていませんでした。また息を吸いすぎて血液がアルカリに傾き、手足がしびれ、ひどい場合は失神することもある『過呼吸』を起こした時の処方についても、口に袋をあてがって、腹式呼吸でゆっくり自分の息を吐いて、その吐いた息を吸うことが効果的であるといわれてきました。
でもそれがなぜ効果があるのかまでは分かっていなかったそうです。ここまで具体的なしゃっくりのメカニズムが解明できたのは、今回が世界初になるのではないでしょうか。
ただし一般的にはしゃっくりは個人差があるため、原因もさまざまで、すべてがこれで解決できるとは限らないということですが、こうした日常的におこりがちな体の不思議については、研究者の皆さんにこれからももっと積極的に解明していってほしいです。
[文・構成/土屋夏彦]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。