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秋の夜空に光々と輝く名月 コロナ禍を忘れて、静かに味わってみる

By - 押阪 忍  公開:  更新:

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こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。

ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。

名月を味わう

10月に入りますと41.1度を記録したこの夏の酷暑のことを忘れています。爽やかな涼しさ、初秋を感じるのは、やはり早朝と夜ですね。

吹く風の涼しさを肌で感じます。晩夏になると、夜は涼味が増し、虫のも聴こえています。愈々いよいよ秋の夜長の始まりです。

さて、十五夜は10月1日で もう終わりましたが、この時季は『お月見の秋』と言ってもよいかも知れませんね。

猛暑日の連続であったこの夏には、夜空の月を眺める というような気持ちにはなれませんでしたが、日が経って涼風の夜空にクッキリと輝く秋の月を眺めると、平安時代の「月をでる」という風習を思い浮かべます。

平安のやんごとない貴族たちは、輝く月を見上げるだけではなく、川の水面みなもや盃の酒に映った月を愛でた と言われています。盃の酒の月、正に風流この上ない『月のうたげ』ですねぇ…。

お月見は、もともと収穫祭の意味合いの濃い秋の行事です。収穫した里芋、栗、柿など、そして刈り取った もち米で作ったお団子を供え、秋の七草の1つ、ススキを添えて 収穫への感謝を表したものです。

この中で子供達が喜ぶのは お供えの月見団子ですが、中国では月餅げっぺいとなるようですね。このコロナ禍の中で 子供達にお月見の話題が出るかどうか… 出て欲しいと願っています。

澄み切った秋の夜空に光々と輝く名月… コロナ禍を忘れて、この自然の美しさ 大きさ 豊かさを、静かに味わってみる…。人の何と小さきことかを、夜空の月が教えてくれるような気がいたします。

「名月や 畳の上に 松の影」 其角

<2020年10月>

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フリーアナウンサー 押阪 忍

1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2020年現在、アナウンサー生活62年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。

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