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遊びで負けると、大泣きしてしまう子供 保育者が考える『寄り添い方』とは?

By - grape編集部  公開:  更新:

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悔しい気持ちは否定しないで、悔しがり方を工夫してみる

大泣きしてしまう子について、なんで泣いているんだろうって考えてみます。もちろん「悔しいから」ですよね。けれど、その「悔しい」って感情って本人は正確に認識できているでしょうか。

なんだか分からないけれど「ぐわーーっ!」って感情が湧いてきて、なんだか分からないけど不快でどうしようもなくて泣いてしまっているかもしれない。前述したように、悔しいのではなく傷ついたり、否定されたように感じたりしているのかもしれません。

悔しいという感情じゃなく、泣いてお菓子をせがむように思い通りにいかなくて駄々をこねるような大泣きもありますもんね。

もしかしたら、負けるってことが自分の全てを否定されたような気持ちになっているかもしれない。負けた自分に価値がないような、間違っている自分を突きつけられたような、そんな絶望に打ちひしがれているのかもしれない。

大袈裟に思うけれど、あながち本人にとってはそれくらい重大なことだったりもします。

泣かないことや、悔しがらないことを求めるとその子は感情のやり場がなくなってしんどくなっていきます。僕にできるのはその子がしんどくないように手助けすること。そのぐちゃぐちゃの感情を言葉にして整理してあげると、その子が自分の気持ちを整理するための手助けになるかもしれません。

「勝ちたかったんだよね」とその子の思いを代弁してあげられるかもしれないし、「思い通りにいかず悔しいよね」だったり「負けたくなかったね」だったりするかもしれない。

すぐに泣き止む魔法の言葉ではないけれど、自分が分からなくなるくらい大泣きする感情に名前をつけてもらって少しずつ言葉にして整理できるようになってきたら、訳もわからず大泣きすることも減っていくかもしれません。

減らないかもしれないけれど、泣くこと自体を否定されるのではなく受け止めてもらえていると感じるだけで、その子は安心できるんじゃないかなと思っています。そしていつか自分の感情と向き合っていくための小さな手助けになるように思います。

結果だけじゃなく「負けちゃったけどいい戦いだったね」「惜しかったね」って楽しんでいた時間にも目を向けられると、よりその遊びが好きになっていきますよね。

そんな手助けになる声かけができたらいいな。つい、「楽しんでたやん!泣きなさんなや」とか言っちゃうんですけどね。

気休めのように感じるけれど、その子の頭の中にいっぱいになっている「負けた」に別の視点を言葉で伝えてあげることで、その子の気持ちが軽くなることもあるんじゃないかなって思います。

そうやって見てみると、悩み3「切り替えに時間がかかる」というのも、例えば「その子が自分で気持ちを整理するのに時間をかけている」と見てみると、少し余裕を持って見守れる気がするし、また、声のかけ方も工夫できそうです。

もちろん、他の理由もあるかもしれないので、断定はせずひとつの視点として頭の隅に置いておくためのものです。

そして、本人はその状態をどう感じているのかも考えたいなって思います。

ただ駄々をこねて勝たせろと言っているなら気に留めなくてもいいかもしれないですが、きっと泣いちゃってしんどいですよね。

しんどいのなら切り替える方法を一緒に見つけていけたらいいなと思います。悔しいって気持ちを我慢するよりも、どんなふうに表出するのか。あの子のようにトイレに行ってクールダウンするのか、動画を見て落ち着くのか、走り回るのか。

その子のしんどくない方法で、他の子もしんどくならない方法で見つけていけるといいなって思います。

悔しがるなよ負けて泣くなよって言うことではなくて、悔しがったり負けて泣いたりしてもいいから、しんどくない方法を見つけてみようっていう心持ちになれたらいいなって。

ただ、悔しさと付き合っていくのって成長に伴って身につけていくものだし、簡単にはできないことなので、毎回大泣きしてしまって本人や周りがしんどくなるようならその状態にならない方法も考えていきたいです。

悩み3 負けも受け入れ、友達と楽しく遊べるようにするにはについて考えてみる

悔しさが成長の糧になる、と聞くことがありますが、僕は、その子が悔しさを苦痛と感じるなら無理にそれを感じなくてもいいんじゃないかなと思っています。楽しさや面白さが悔しさを上回ってようやくその悔しさがエネルギーになるんじゃないかなって。

遊びには、勝ち負けのない遊びと、勝ち負けだけを楽しむ遊びと、勝ち負けがありながらそのゲーム性を楽しむ遊びがあります。

例えば、ごっこ遊びは勝ち負け関係なく楽しめますよね。お絵描きをしたり、折り紙や工作をしたりするのもそれに当たります。

じゃあ、その折った紙飛行機を飛ばして競争しよう、となればこれは勝ち負けのある遊びに発展します。作るのも、投げるのも遊びとして楽しんだ結果、勝ち負けも楽しめる。

結果って書きましたが、その過程を楽しんでいるなら勝負ありきでスタートしても、勝ち負けがありながらそのゲーム性を楽しむ遊びと言えると思います。

明確な区分があるわけではないので、なんとなくイメージするくらいで大丈夫です。

3つ目の、「勝ち負けだけを楽しむ遊び」というのは、じゃんけんとかカードを捲って大きい数字が出たほうが勝ち、など、勝ち負けしかないもの。じゃんけんを覚えたてならグーチョキパーを出すことを楽しめるけど、ほとんどの場合は勝ち負けだけですよね。

また、ゲーム自体の楽しみを感じないけれど勝つことだけが目的になっているものも、その人にとっては勝ち負けだけの遊びと言っていいんじゃないかなと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、その5歳さんにとってのトランプはどれだろうって考えてみます。せっかくその子が好きなものなので、その好きを知っていけたらいいなと思うんです。

例えば、トランプをめくって高い数字が出たほうが勝ち!というゲームをするとします。こんな遊び方をしているかは分かりませんが、考え方の話なのでお付き合いください。そのめくる行為が楽しいならそれはゲーム自体を楽しむ遊びですよね。

ただ、勝ち負けだけが目的なら、勝った時の優越感を感じるためのものなので、負けて大泣きしてもまあしょうがないよねって感じです。博打みたいなものですから。

でも、トランプが好きって言っているということは、ただ勝つことだけを求めてやっているわけではないような気がします。例えばトランプのババ抜きの場合、引いたカードで手札が揃うと嬉しいですしジョーカーを引かないかとハラハラするのを楽しんでいるかなと想像できます。

少し大人になると持っていないフリをしたり取るように誘導したりと心理戦を楽しめるようにもなってきますよね。負けて大泣きするまではしっかり楽しめる。

その子はトランプのどのゲームのどの部分を楽しんでいるでしょうか。もし、勝ち負けまでの過程を楽しめているのなら、勝ち負け自体をなくしてみるのもひとつの手かもしれません。

負けても楽しめるくらいまでは、負ける遊びをしないのもひとつの方法かも

将棋が好きでよく僕に挑んできてくれる子がいました。低学年の頃に将棋に興味を持って、中学年の頃には僕と平手(ハンデなしのこと)で指していました。

先述した通り、僕は手を抜かないので平手で打つと僕が勝つことが多くなります。その時もあと一歩のところで僕が勝ったんですが、その子は投了後じっと黙っていたと思ったらボソッと「悔しい」って言って、僕は「悔しいよなあ、惜しかったなあ」と返した。するとその子は、「悔しいけど楽しい」って笑ったんです。

その子にとって、負けることはこの上なく悔しいことだけれど、それ以上に勝敗がつくまでの過程やこのゲーム自体を楽しいと感じている。この「楽しい」という感情以外に「負けを受け入れる方法」ってないんじゃないかなって思うんです。

悔しいっていうのは、本気でやっているからで、逆に悔しくないのならそれはどこかで本気を諦めているのかもしれない。

その子がそのゲーム自体を楽しもうとしているのか、ただ勝つことだけを求めているのか、どちらを望んでいるのか考えてみるとまたその子への理解が深まるような気がします。

もしその子が勝ち負け関係なくトランプを楽しんでいて、勝敗がなくてもそれ自体を楽しめるのなら、「負けても楽しい」になるまで勝ち負けを曖昧にしてもいいのかなって思います。

勝つことにこだわっているのではなく、負けたくないということにこだわっているのかもしれないから、それなら、勝ち負けがなくてもきっと楽しめるんじゃないかな。

これは「勝ち負けなんて無くしちゃったらいいんだよ!」ということではなくて、勝ち負けに囚われずにその遊びを楽しむこともできたらいいなということ。

具体的な例を出してみると、ボードゲームには対戦するものと全員で協力してミッションをクリアするものがあります。トランプも、協力ゲームにすると負けることがなくなってそのゲーム自体を楽しめるかもしれません。

ババ抜きをジジ抜き(ジョーカーではなく別のカードを見ずに抜いてジジにするやつ)に変えて、みんなでババ抜きをしながら最後の何枚かになるまでにジジの数字を当てる、とか、神経衰弱をみんなで協力してどれだけ早くクリアできるかとか、工夫したら今楽しんでるゲームのまま色々できるかもしれませんね。

もちろん勝つ喜びもあるので、勝ち負けの要素を残したいということなら、ハードルを低くしてみるというのもあります。

10回勝ったら優勝とかにして、一回ずつのゲームは小さな勝ち負けにするとかすると、いちいち悔しがってられないからそのゲーム自体を楽しめるかもしれない。いや、一回ずつしっかり大泣きするかもやけどね。

カルタをしていて、その時は楽しくてご機嫌に過ごしてたのに、最終的に結果発表をして負けが決まったら大泣きするなんてこともあるじゃないですか。楽しい時間が台無しやん〜って。でも悔しいもんは悔しいもんなあって。

なら、「負けても楽しい」くらいになるまでは、その遊び自体を楽しむだけでもいいんじゃないかなって。

ひとつそういう経験があると、新しい遊びに向かう時の支えになったりもします。

「このゲームもはじめは負けてばかりだけど、そのうちきっと楽しくなるかも」って思えたら、そういったことを積み重ねて、少しずつ負けることを受け入れられるようになるかもしれません。

癇癪(かんしゃく)ばかりで大変だったり、他の子が潔く負けを認める姿を見て比べたりしてしまうと、その子を「負けを受け入れられる子に変えないと」と思ってしまいそうになります。

けれど、その子を理想の形に変えることよりも、勝ち負けにこだわって泣いてしまうことでその子や自分や周りがどんな風に困っているのかを見て整理して、どうやったらそれを解消していけるかを考えていけたらいいなと僕は思っています。

勝ち負けを潔く受け入れられて、悔しがったり泣いたりせずにいられると、きっと本人にとってもしんどさは減るだろうけれど、その子自身がしんどい思いをしてまで克服しなきゃいけないのなら、無理にそうしなくてもいいんじゃないかなって。

負けることってやっぱり傷つくことだから受け入れられないままでもいいかな、戦わないで生きていくのもいいのかなって、それもひとつの答えとして持っておいていいのかなって思っています。

長々と書いた結果、どこにも答えは出てきませんでした。

けれど、「こうかもしれない」という視点が生まれると、新しい目でその子を見ることができて、さらに「こうかもしれない」が増えていきます。

その「かもしれない」を大事にしながら、その都度その時に自分ができる工夫をしていきながら、本人にとっても周りの友達にとってもご自身にとってもしんどくない方法を見つけるきっかけにしていけたらいいなと思っています。

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[文・構成/きしもとたかひろ]

きしもとたかひろ

兵庫県在住の保育者。保育論や保育業界の改善について実践・研究し、文章と絵で解説。Twitterやnoteに投稿している。
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