『AIは日本酒職人の助けになるか』 全ては美味しい日本酒のために
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岩手県二戸市(にのへし)の酒蔵『南部美人』は、伝統産業の市場調査などを手掛ける『ima(アイマ)』と提携して、AI(人工知能)を活用した酒造りの実験を始めたと発表しました。AIを活用した酒造りは、日本酒業界では初だそうです。
※ 写真はイメージ
南部美人5代目蔵元の久慈浩介さん(45)によれば、長い経験を積みながら一人前になった酒造り職人=杜氏(とうじ)が年々少なくなっていき、東京では『丸眞正宗(まるしんまさむね)』を製造していた小山酒造さんが清酒製造事業から撤退しました。会社は黒字経営だったのですが、製造技術者の確保が難しくなったことが大きな理由になっているようです。
技術者はすぐに一人前になりません。長い経験を積みながら一人前になるといいます。いまも昔も職人の技術継承はどこの国でも難しく、このままでいくと永遠に技術者の人手不足が続くと危機感を感じていたそうです。
さらには、酒造りの中でもっとも重要で職人の『目』が必要になるのが『吸水』だと久慈さんは語ります。
「ここを間違うとその先大変な苦労が待っていますし、ここを完ぺきにやるにはかなりの経験とデータが必要になります。データは蓄積できますが、経験はその人しか得ることのできないものです。」
※ 写真はイメージ
そんな中で、AI(人工知能)研究の第一人者で東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊准教授が「AIは人の目になれるか」という話をしていたのを思い出したんだそうです。
「醸造⼯程において⽶の吸⽔は、現在でも職⼈の経験と勘による吸⽔タイミングの判断がなされており、この属⼈的な判断をAIの活⽤により標準化し、未来へ継承することができるのではないかという仮説をたててみよう!」
久慈さんは、酒造りでもっとも重要かつ、もっとも『目』を使う技術である『吸水』の部分をAI(人工知能)に「助けてもらえないか」という考えで今回この実証実験に取り組むことにしたそうなんです。
『吸水』とは、⽶を蒸す前の大事な工程の1つで、未だに職⼈の経験と勘でタイミングの判断がなされているそうです。このタイミングの長短でその後のこうじ菌の繁殖度や酒米の溶けやすさが変化してしまうため、機械化することができなたかったといいます。
この『吸水』という工程は杜氏の目がとても大事な役目を果たしていると考え、まず吸⽔⼯程の様子を映像化してAI(人工知能)に学習させ、杜氏の『勘』で最適と判断しているタイミングをデータ化。このデータを元にAIの画像認証技術により検知できるかの実験をスタートさせました。
まさに杜氏が最適と判断してきた『勘』をデータ化することで、最適な吸⽔時間を⾃動的に通知し、再現可能で⾼品質な酒造りを⽀援するツールが作れるかの試みです。ちなみにアドバイザーとして東京⼤学⼤学院松尾豊特任准教授にも協⼒を賜ったということです。
久慈さんは語ります。
「間違えていただくと困るのは『日本酒の製造技術をAIにしてしまう』ではなく、あくまで『AIは職人の助けになるか』という部分です。私の考えでは日本酒の製造をAIに置き換えるのはいまは無理です。100年先は分かりませんが、AIがあまり経験のない職人の助けになれば日本酒製造がとても安定してきます。
(中略)
いまはまだ難しいかもしれないAIと日本酒製造ですが、そんな時代からデータを蓄積し、ディープラーニングでAIに学ばせて育てていくのも100年先の未来の日本酒業界のために役立つのではないかと思いました。
(中略)
南部美人の今年の目標は『その先へ』です。誰もまだ挑戦していないAIと日本酒製造という未知の領域を『その先』と考えれば、挑戦する意義があると思います。すべては未来の蔵元のために。」
※ 写真はイメージ
現在実験の真っ最中で、その成果は2月22日に発表する予定。よい結果が出ればついに酒造づくりにAIが導入されるということで、職人の世界にもAI時代の幕開けです。
[文・構成 土屋夏彦]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。