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『確信犯』って、実はそういう意味だったの? 意外と間違えがちな言葉

By - grape編集部  公開:  更新:

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日常生活の中で見聞きする言葉の中には、誤った意味のまま理解されている言葉が多くあります。

その1つが、テレビや新聞などで使用されることがある『確信犯』です。

確信犯の意味を間違えて覚えている人は多く、時にはテレビや新聞などでも誤用されています。

当記事では、『確信犯』の適切な使い方を、言葉の由来や具体例を踏まえて解説します。

確信犯の類義語や対義語など、理解を深めるための内容も説明するので、日本語の知識や情報を増やしたいと思っている人は、ぜひ参考にしてください!

『確信犯』の意味とは?言葉の由来も

『確信犯』とは、道徳や政治、宗教など特定の思想に基づき、違法行為を起こした人を指す言葉です。

勘違いされやすい点として、確信犯とは『自分が悪いことをしていると認識している状態』と思われるケースが多くあります。

しかし、行為者自体が自分のことを『正しい』と認識し、良心で行動している状態が確信犯なので、間違って覚えないように注意しましょう!

『確信犯』という言葉は、もともとヨーロッパで生まれました。

宗教や政治、思想に基づいた犯罪が増えていた時期に、行為者を指す法律用語として使用されるようになったのが語源で、日本語では『確信犯』と訳されました。

『確信犯』は誤用が目立つ言葉

『確信犯』は、本来の意味とは違う使われ方をされることが多い言葉です。

文化庁が2016年9月に発表した『平成27年度 「国語に関する世論調査」』では、多くの人が『確信犯』の本来の意味を認識していないことが明らかになっています。

正解である『政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人』を選んだ人は、全体の17.0%でした。

一方で、『悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人』を選んだのは、全体の69.4%にも上るのです。

なお、『両方』と答えた人や、『どちらも違う』と答えた人も一定数います。

『確信犯』の適切な使用例と誤用例

『確信犯』の本来の使い方と誤った意味での使い方について、それぞれ具体例を紹介します。

【適切な使用例】

・歴史的なこのテロ事件も、当事者たちは世界をよくしたいと本気で思っていたわけで、確信犯だよね。

・家族を守るために罪を被った彼は、確信犯だ。

・あの政治家は懲戒処分になったけど、自分の思想に基づいて自信を持って行動した確信犯だ。

【誤用例】

・あの車は制限速度を超えて衝突したから犯罪性が高いよ。確信犯だ!

・映画館で、僕の前のお客さんが映画をスマホで撮影していたんだ。あれは、確信犯だよ。

・さっきのスライディングはミスではなく明らかにわざとだったから、完全に確信犯だ。

上記のように、『確信犯』は基本的に犯罪行為に使われるため、本来であれば日常のシーンで使用される言葉ではないといえます。

【例文付き】『確信犯』の類義語と対義語を2つずつ紹介!

『確信犯』という言葉は誤用されやすい上に、類義語や対義語も多いため、明確な区別が難しい言葉でもあります。

『確信犯』の類義語としては『故意犯』と『意図的』、対義語としては『恣意的』と『愉快犯』が代表的です。

ここでは、類意義と対義語について、辞書的な意味や例文を紹介します。

【類義語】故意犯

『故意犯』とは、自分の行為が間違っていると分かっていながら、犯罪を行うことです。

窃盗など、犯罪の動機が完全に自分都合によるものも該当するため、『確信犯』と比べて行為動機が異なります。『故意犯』を使った例文は下記の通りです。

【例文】

・お金がないことを理由に万引きしたあの人は、故意犯だ。

・傷害罪は故意犯だ。

『故意犯』は、殺人や窃盗、傷害など、犯罪に対して使われることが一般的です。

【類義語】意図的

『意図的』とは、『自らの目的や考えに則って行う』という定義の言葉であり、本人が『どうなるか分かっている』という点で『確信犯』と似ています。

一方で、『意図的』は、自分の行為をよいこと、悪いことのどちらと認識しているかは関係なく使用され、個人的な都合を動機とする場合もあります。

『意図的』を使った例文として、下記の2つを紹介します。

【例文】

・彼は、目的地に早く着くために意図的に信号を無視した。

・ダイエット中の母は、意図的に昼食を減らしている。

『意図的』は、『確信犯』や『故意犯』に比べると、日常会話の中でも使われることが多い言葉です。

【対義語】恣意的

『恣意的』は『しいてき』と読み、『思い付きで』『自分勝手な』などの意味を持つ表現です。

本人の信条に基づいているわけではなく、思い付きや自分の感情に任せて行動するため、『確信犯』とは反対の意味を持つ言葉といえます。

『恣意的』は、自分本位の行動や考えに対して使われることが多く、マイナスなイメージの意味合いが強くなります。

具体的な使い方は下記の通りです。

【例文】

・彼の判断は恣意的だ。あれでは会社が悪い方向に向かってしまうよ。

・あの上司は恣意的な評価をする部分があるので、気を付けたほうがいいよ。

『恣意的』は、ビジネスシーンや硬い文章内でよく使用される言葉です。

日常生活で頻繁に使用されることはありませんが、ぜひ意味を覚えてくださいね。

【対義語】愉快犯

『愉快犯』は、社会を騒がせたり、慌てさせたりすることを目的に犯罪を行う人を指す言葉です。

行為者自身に信条があるわけではなく、『気ままに楽しみたいから』という漠然とした理由で犯罪を起こすため、『確信犯』の対義語として挙げられます。

違法性を伴う行為だけでなく、いたずらや嫌がらせなど、身近な出来事に対して『愉快犯』を使う場合もあります。

『愉快犯』の例文は下記の通りです。

【例文】

・先日の騒音トラブルは、愉快犯の仕業だったみたいだよ。

・相手が嫌がっているのに、彼はいたずらを楽しんでいる。まるで愉快犯だ。

『愉快犯』は、『自分の楽しみのためだけに行われている』という点が、ほかの言葉との大きな違いです。

使い方に迷った場合の参考にしてくださいね!

『確信犯』が本来の意味で使われる可能性は?

現実として、『確信犯』が本来の意味で使われているケースは少なく、『悪いことが分かっている状態』という認識で定着しているといっても過言ではありません。

これまで誤用されてきた言葉が急に正しい使われ方をされることは考えにくいので、今後も『確信犯』が本来の意味で使われる可能性は低いでしょう。

また、『確信犯』以外にも、誤用とされながら日常に定着している言葉は多くあります。

例えば『爆笑』という言葉は、本来『大勢の人が笑う』という意味ですが、『大笑いする』のような意味合いで理解している人は珍しくありません。

また、『既存』は本来『きそん』と読みますが、『きぞん』と読む人が多く、一般的に『きぞん』も認められています。

以上を踏まえると、『確信犯』は本来の意味で使われるのではなく、誤用が認められる形で定着する可能性が高いといえます。

『確信犯』が誤用されていても指摘する必要はない?

『確信犯』が本来の意味で使われないことが多いといっても、実際に誤用されている場面に遭遇した場合の対応に迷う人は多いでしょう。

『確信犯』という言葉に限らず、主に仕事や議論をする場面では、誤用があった場合は、必要に応じて指摘したほうがよいといえます。

認識に相違があると、仕事や議論の方向性がズレる可能性がある上、関係者も間違った意味合いで覚えてしまい、そのまま広がってしまうためです。

一方で、日常会話やSNSの投稿などプライベートの範囲では、指摘する必要性が薄いといえます。

もし指摘する場合は、その場の雰囲気や相手との関係性を踏まえて、臨機応変に行ってくださいね。

まとめ

『確信犯』は、道徳や政治、宗教などの思想に基づき、違法行為を起こした人を指す言葉です。

よく、『悪いと分かっていて行動に起こすこと』と認識されていますが、本来の意味ではありません。

実際に文化庁の調査においても、約7割の人が『確信犯』が持つ本来の意味を把握していないことが分かっています。

世の中には、『確信犯』以外にも本来の意味ではないまま定着した言葉が多くあり、今後も『確信犯』が正しい意味で使われる可能性は低いでしょう。

仕事や議論の場では必要に応じて指摘しながらも、日常生活ではある程度許容することをおすすめします!


[文・構成/grape編集部]

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