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「マスクの下は笑顔です」 横浜中華街のホテルで始めた、コロナを乗り越える『取り組み』とは?

By - 伊藤ゆい  公開:  更新:

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新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)によって、私たちの日常は大きく変化しました。

感染対策を意識した行動を取るようになり、旅行や帰省などの遠出を自粛するようになった人も多いでしょう。

そんな中、ホテルや旅館などの宿泊施設では、宿泊客に安心して楽しんでもらえるよう、さまざまな工夫や新たなサービスを始めているようです。

2021年2月上旬、神奈川県横浜市中区にあるホテル『ローズホテル横浜』に取材をしました。

横浜中華街エリアの老舗ホテル 『ローズホテル横浜』の新たな挑戦

『ローズホテル横浜』は、横浜中華街エリアの中にあり、国内外から多くの観光客が訪れる横浜を代表するホテルの1つです。

しかし、2020年から始まったコロナウイルスの流行によって、これまでにないピンチに陥ったといいます。

ホテルの総支配人である、渡部一樹さんにお話を伺いました。

――2020年からのコロナウイルス禍によって、ホテルにどんな影響がありましたか。

ローズホテル横浜は、国内のお客様が8割、外国人のお客様は2割程度いらっしゃいます。欧米系のお客様やアジア圏ですと、台湾からのお客さまが多いですね。

ちょうど1年前になりますけども、まず最初にコロナウイルスが中国の武漢から出たということで、「中華街=中国人が多いから危ない」といった風評被害にあいました。

でも実際、横浜中華街にいらっしゃる中国の方というのは、ずっとこちらに住んでいる方で、外からたくさん来ているわけではありません。

しかし、中華街は怖いから行かないという理由でのキャンセルが出てしまって、それに追い打ちをかけてダイヤモンド・プリンセス号の件がありまして…。中華街というより「横浜全体が危ない」となってしまった。

2020年1月、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の船内でコロナウイルス感染のクラスターが発生。横浜港に停泊したことで大きな騒動になりました。

また、中国でコロナウイルスが最初に見つかったこともあり、中華街エリア全体に対するイメージの低下は深刻だったといいます。

それから1年以上が経ちますが、中国の旧正月『春節』の時期にもかかわらず、中華街の人手は少なめ。にぎやかさを取り戻すまでは、まだ時間がかかるでしょう。

予想だにしない事態で、ホテルの運営についても大きな見直しが求められ、感染対策をはじめ、さまざまな取り組みを始めたそうです。

――コロナ禍になって、サービスが変わったことは?

まず、大きく変わったことは接触をできるだけ、避けるというところです。

お客様と会話をするのをなるべく避けなければいけない。それがこれからのホテルのサービスになっていくのかなと。

そこで、これまではチェックインの際、お客様の荷物を持ってお部屋まで行くサービスを行っていましたが、逆に避けるようになりました。

もちろん、お客様の中には持ってほしいと希望される方もいますので、お声がけをして、ご希望の方には荷物をお部屋まで運ぶという形に変えました。

また、宿泊のお客様にはまず体温と健康チェックをさせていただいてから、チェックインになります。そこではどうしても手間と時間がかかってしまう。

お客様にとって待たせる行為はストレスになってしまうので、以前のようにチェックイン時に朝食の案内を丁寧にすることは避けるなど、時間をかけないような接客に変わってきています。

――感染対策は、どのようなことをしている?

感染対策はもちろん力を入れていて、部屋の清掃にはかなりの時間をかけるようになりました。お客様が手に触れる場所はすべて消毒いたします。

テレビのリモコンは直接手で触れないように、ビニールをかけ、不特定多数の人が触れるボールペンやメモ帳は下げるようになりました。

客室だけでなくレストランについても、清掃は徹底しています。お客様が出た後は消毒剤でテーブルと椅子をすべて拭き取ります。

消毒液を置くだけでなく、体温チェックのための非接触の体温計、二酸化塩素が飛んで空間除菌をするための機械なども導入しました。

あとは社員についても、人と接触した後の消毒は徹底しています。いい意味で神経質にはなりましたよね。

渡部さんいわく、「感染対策は手間がかかるけれど、目に見えないことが多い」とのこと。

ローズホテル横浜では感染対策を実施していることを分かりやすく示すため、簡単な動画を作成してウェブサイト上に掲載しています。

『おもてなし』の心を大切にしたい 従業員が身に付けているものとは?

「できる限り安心して泊まってもらいたい」という想いで感染対策を徹底していると話した渡部さん。

しかしこうした感染対策を重視することで、接客の部分でさまざまな課題が発生したそうです。

その中の1つが、マスク問題

従業員は全員マスクを着用して接客をしていますが、これによって表情が隠れてしまうのが気になったといいます。

そこで、従業員が身に付けるようになったのは…。

「マスクの下は笑顔です」

名札の下には、笑顔の写真が!確かにこれなら、相手がどんな顔をしているのか、ひと目で分かりやすく安心ですし、見ていてほほ笑ましい気持ちになりますね。

渡部さんは『笑顔付きの名札』を始めた経緯について教えてくれました。

――『笑顔付きの名札』を始めたきっかけは。

やはり、我々がお客様に第一印象を与えられるのが、笑顔です。

しかし、それがこのマスクによって半減してしまう。お客様に伝える意味でこの名札を始めました。

また、社員に対してもコロナ禍では元気がなくなってモチベーションが下がってしまいがちになりますので、このバッチを付けてみることによって「笑顔を忘れてはいけない」という意識付けにもなればと思っています。

もう1つは、ホテルの新入社員に対してなのですが、彼らは入社してからずっとマスクを着けています。

お互いの素顔が分からないことがあったので、社員同士がお互いに顔を覚えるという意味でも大切なのです。

新しく入った社員のコミュニケーションのためにも、取り入れたという『笑顔付きの名札』。宿泊客や同業者の人たちからも好評を得ているそうで、「これは良い取り組みだね」と言葉をかけてもらえるといいます。

「表情はやっぱりホテルマンとしては大事なところです」と渡部さんは語っていました。

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