工場でカットされた『しめじの石づき』 実は捨てずに?「コレはすごい」「初めて知った」
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株式会社ミスズライフに話を聞いてみた!
長野県上水内郡飯綱町にある同社では、石づきをカットしたしめじ、『そのまま使える 里山ぶなしめじ』や『ぶなクイーン』、『冷凍カットぶなしめじ』などの商品を製造、販売しています。
『そのまま使える 里山ぶなしめじ』(画像提供:株式会社ミスズライフ)
まずは、石づきをカットした商品を開発するようになった経緯について、話をうかがいました。
弊社は1991年に創業したのですが、当初は株付きのぶなしめじを生産・販売していました。
1999年頃、工場のスタッフから「石づきをまな板の上でカットした時に、まな板が汚れるし、石づきはゴミになる」という話があり、それをきっかけに商品の開発が始まりました。
改良を重ねた結果、2004年に石づきをカットしたぶなしめじの販売を開始したのです。
現場の声をきっかけに、ぶなしめじの石づきを切り取り、バラバラにして販売することに。消費者は袋から直接調理をすることが可能になり、調理や片付けの手間が省けました。
また、企業側としても、石づきがないぶん、運送の際に1箱に入れられる量が増えるなどのメリットがあるそうです。
では、生産過程でカットした石づきは、具体的にどのようにして活用していくのでしょうか。
捨てたらもったいない!しめじの『石づき』がすごかった
そもそも、しめじはしいたけのように原木から生えてくるようなイメージがありますが、意外にも、瓶の中で栽培されるとのこと。
しめじは、専用の瓶の中で栽培されています。瓶には培地と呼ばれる栄養成分が入っており、そこにぶなしめじの菌を植え付けています。
その後、ほかにも細かい工程はたくさんありますが、長い期間培養し、最終的に1つのきっかけを与えると、ぶなしめじが瓶から出てくるという流れになります。
栽培用の瓶から生えるぶなしめじ(画像提供:株式会社ミスズライフ)
瓶の中に入っている培地は、トウモロコシの芯を細かく砕いた『コーンコブ』や米ぬか、小麦の表皮であるフスマ、豆腐を作る際に出るオカラなどをブレンドしたものでできているそうです。
ぶなしめじを収穫した後、根元の石づきと瓶の中に残った培地は、2通りの方法で再活用されていくといいます。
リユースの方法は現状大きく2つです。
1つは、堆肥化です。工場に隣接している堆肥プラントに、ぶなしめじを収穫後の瓶の中身を出したものを持って行き、大きなスクリュードライバーのような機械で攪拌(かくはん)します。
すると、培地の主原料となるコーンコブなどの栄養成分がベースとなって発酵が始まるんです。
発酵するとだいたい80℃くらいまで熱を持ち、水分量が下がり乾燥してくるわけですね。約3週間ほどかけて発酵する中で、だいたい水分率が30~35%ほどまで落ちてくると、肥料の一部、『ぼかし肥料』と呼ばれる土壌改良剤のようなものになります。
これをパートナー企業の農場や近隣の畑に鋤(す)き込んで、ベビーリーフや露地野菜などの栽培に活用しています。
プラントで石づきと使用済みの培地を攪拌する様子(画像提供:株式会社ミスズライフ)
農作物を育てる上で、土壌の状態をよくすることは必要不可欠。同社では、土壌に混ぜ込んで使うぼかし肥料を、ぶなしめじの石づきと培地から作っているといいます。
ぼかし肥料と普通の肥料には、大きな違いがあるそうです。
通常の肥料には、土壌に不足しがちな植物の成長を促す成分『窒素』『リン酸』『カリウム』の3要素が含まれていますが、『ぼかし肥料』の含有率は肥料と呼ぶほど高くないです。
農作物の生育期に使う肥料というより、畑の土壌改良をする時に混ぜ込んで使うため、あまり窒素、リン、カリウムの精度が高すぎると、土壌や環境にとって逆に弊害になってしまうものですから。
当社のぼかし肥料は、そういった悪い影響を与えないため、立て続けに農作物を作る連作にも適しているので、非常に喜ばれて使われていますね。
ぼかし肥料は、土壌を健康的に保ち、農作物の生育をうながす効果がある(画像提供:株式会社ミスズライフ)
また、栽培後の石づきと培地を再活用する、もう1つの方法についても教えてもらいました。
もう1つは、当社の製品『ぶなクイーン』を作る培地として、再利用しています。
大きめなコンテナのような箱に、ぶなしめじを収穫した使用済み培地を入れて、特殊な製法で『ぶなクイーン』を作るんです。
『ぶなクイーン』はものすごく大ぶりで、食感が非常にプリプリしているんですよ。
『ぶなクイーン』を栽培する様子(画像提供:株式会社ミスズライフ)
仮『ぶなクイーン』(画像提供:株式会社ミスズライフ)
カットした石づきと培地は、堆肥として農地に還元されるだけでなく、なんともう一度ぶなしめじの栽培にも活用されているのだとか。
それだけ栄養分が多く残っているということなのですね。
家庭で石づきを再活用できないの?
カットした石づきを使って、もう一度ぶなしめじの栽培をしているという同社。
「同じことを家でもできないのかな…」と気になるところです。思い切って聞いてみると、親切にも答えてくれました。
まずおそらく、栽培するには、培地の代わりとなるものが必要なのかなと。収穫した後の石づきには、菌糸としての力が残っていないと思います。
また、ぶなしめじの種、いわゆる種菌と呼ぶんですが、空気中にいる外菌に弱いので、製造工場の中では、外菌を防ぐためにクリーンルームの扱いをして生産しています。
なので、家庭で同じようなこととなると、非常に難易度は高いと思いますね。
「豆苗のように根元をカットしても、もう一度生やすことができるのでは…」と思いましたが、スーパーで購入したしめじの石づきを取っておいても、やはり栽培は難しいとのこと。同社が培った技術があってこそ、可能になるのでしょうね。
ぶなしめじの石づきから、持続可能な農業を考える
気候変動や環境破壊の問題が取りざたされている昨今。生産性を保ちつつも、環境負荷の軽減や土壌の保全に配慮した『循環型農業』が求められています。
同社では創業当時から、この循環型農業のスタイルを推進してきました。石づきを活用する取り組みには、「農業に貢献していきたい」という思いがあったそうです。
利潤を上げるために石づきと培地を再利用するという考え方ではなく、やはり生産活動をする上で、循環型経営、循環型農業を形にしていきたいと創業者は思ってきました。
畑に貢献できるような取り組みがすごく大事であって、肥料を売って利益を上げることが、主目的ではないところがあります。
世の中では最近SDGsの考え方が広まりつつありますが、当社では循環型農業を創業当初から提唱してきました。今の時代の流れも含めて、非常にいい活動を続けているという自負はありますね。
使いやすさに注目が集まる『カットぶなしめじ』ですが、その背景には、『持続可能な農業の実現』という、生産者と消費者にとってより大きなメリットがありました。
普段何気なく調理して食べている農作物が、どのような生産工程を経て手元にあるのか、時には関心を持つことも大切。
消費者の意識をきっかけに、『食の未来』を支える素敵な取り組みが広まっていくといいですね。
[文・構成/grape編集部]